「やりたいこと」の正体
「やりたいことが見つからない」という悩みをよく聞く。就活生だけじゃない。社会人になってからも「本当にこれが自分のやりたいことなのか」と迷う人は多い。
ここで面白いのは、「やりたいこと」の中身が結構変わるということだ。学生時代は「クリエイティブな仕事がしたい」と思っていた人が、営業の現場で人と関わる面白さに目覚める。逆に「人を助ける仕事がしたい」と志していた人が、研究職の奥深さに引き込まれる。こういう話、珍しくない。
心理学でいう「職業興味」は、HollandのRIASEC理論で6つのタイプに分類される。現実型、研究型、芸術型、社会型、企業型、慣習型。自分がどれに当てはまるかを調べる検査は、アメリカ労働省のO*NETをはじめ、世界中のキャリア教育で広く使われている。
ただしRIASECで測れるのは「今の自分が何に興味を持っているか」であって、「永遠にこれに興味を持ち続ける」という意味ではない。経験が興味を変えるというのは、いくつかの追跡研究でも確認されている。新しい領域に触れることで興味の対象が広がったり、想定外の仕事でやりがいを見つけたりする。人間の興味は生き物なのだ。
「適性」の正体
一方で、「興味」に対してほとんど変わらないものがある。性格だ。
ビッグファイブ(Big Five)性格理論は、人間の性格を開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向の5つの因子で記述する。この5つのバランスは成人以降かなり安定していて、CostaとMcCraeが30年以上にわたって追跡した研究では、各因子の安定性は0.7から0.8の高い相関を保っている。20代で測った性格と、50代で測った性格が大体同じなのだ。
この安定した性格が、仕事の適性に直結する。BarrickとMountが1991年に発表したメタ分析は、この分野で最も引用される研究の一つだ。彼らは多数の職業を対象にビッグファイブと業績の関係を調べ、誠実性が「すべての職種で一貫して業績を予測する」ことを発見した。几帳面で責任感が強い人は、営業でも経理でも研究でも、総じて高い業績を出す。
つまり「この仕事に向いているか」を判断する材料として、性格は極めて信頼性が高い。今の興味は来年変わるかもしれないが、自分の性格的な強みと弱みはそう簡単には変わらない。キャリアの基礎として考えるなら、適性の方が土台として頑丈だということだ。
この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。
ビッグファイブ診断を受ける(無料・登録不要)「やりがい」の正体
「やりがいのある仕事がしたい」。これもよく聞く言葉だけど、やりがいの正体を考えてみると面白い。
やりがいって、仕事を選ぶ時点ですでに存在しているものだろうか。実はそうではないことが多い。心理学者のDeciとRyanが提唱した自己決定理論によると、人は「自分が上手にできている」と感じる時に、その活動自体への内発的なモチベーションが高まる。要するに、得意なことをしている時に「これ面白い」と感じるのだ。
これをキャリアに当てはめると、話が見えてくる。性格的に向いている仕事は、結果的に上手にできる確率が高い。上手にできるから評価される。評価されるから自信がつく。自信がつくともっと工夫したくなる。このループの中で「やりがい」が育っていく。
逆に興味はあるけれど性格的に向いていない仕事では、苦労が増える。頑張っても結果が出にくい。すると「やっぱり合わない」という感覚が強くなる。最初の興味があったはずなのに、やりがいよりも疲労が先に立つことになる。
ここに「適性が基礎になる」理由がある。興味は後からついてくることがある。でも適性が足りないと、やりがいが育つ前に挫折してしまう。土台がしっかりしている仕事の方が、やりがいが根付く確率が高いのだ。
2つの軸を掛け合わせる
ここまでの話をまとめると、キャリアを考える上で重要な軸が2つある。一つは「興味」、つまり今の自分が何に引かれているか。もう一つは「適性」、つまり性格的に何が向いているか。
この2つを同時に見ると、キャリアの地図が4つのゾーンに分かれる。
適性○ × 興味○
向いていてやりたい仕事
理想のゾーンだ。適性と興味が重なるところに、やりがいが育ちやすい土台がある。向いているから成果が出やすく、興味があるから続けやすい。
適性○ × 興味△
向いているけど今は興味がない仕事
見落とされやすい可能性だ。興味は経験で変わると前述した通り、やってみると面白くなることがある。まだ触れたことがない分野ならなおさら。
適性△ × 興味○
興味はあるけど向いていない仕事
一番注意が必要なゾーンだ。情熱だけで乗り込むと、結果が出にくい中で消耗しやすい。補完的な役割として関わる方が長続きするかもしれない。
適性△ × 興味△
どちらも低い仕事
ここに時間とエネルギーを使い続けることには、慎重になる価値がある。
この4象限を頭に置いた上で自分のデータを見ると、「なんとなく気になる仕事」ではなく、「根拠のある優先順位」が見えてくる。
このサイトでできること
ビッグファイブ診断とRIASEC職業興味検査の両方を受けると、「キャリア統合分析」が使えるようになる。
このページでは、ビッグファイブのスコアをもとにした26職種への適性ランキングと、RIASECのスコアをもとにした26職種への興味ランキングを並べて表示する。2つのリストを見比べるだけでも、「適性は高いけど興味のリストにない職種」や「興味はあるけど適性ランクが低い職種」が一目でわかる。
さらに統合ボタンを押すと、適性と興味を掛け合わせた統合ランキングが生成される。各職種には「適性+興味」「適性メイン」「興味プラス」のタグがついていて、どちらの軸が強いかも確認できる。
自分の性格データと興味データを重ねることで、「なんとなく向いてそう」ではなく、2つの科学的な根拠から導いた職種の優先度が見えてくる。キャリアを考える時の出発点として、使ってみてほしい。