「直したい」という気持ちの正体
内向的な性格を直したいと思う瞬間は、だいたい決まっている。会議で意見が言えなかったとき。飲み会の場で浮いてしまったとき。初対面の人とうまく話せず、会話が途切れるたびに気まずさが積み重なるとき。ああいう場面で「もっと外向的になれたら」と思う気持ちは、感情として完全に自然だと思う。
ただ、少し立ち止まって考えてみると、「直したい」という感覚の根っこには2種類の問題が混在していることが多い。一つはスキルの問題——会話の始め方、話の広げ方、人前で話すときの緊張のコントロール。もう一つは特性の問題——刺激に敏感で、大人数の場が消耗する、というそもそもの脳の傾向。
前者は練習と経験で改善できる。後者は「直す」より「理解する」に近い。この2つを区別せずに「内向的な性格を直したい」とひとまとめにすると、変えられるものに努力を使えず、変えられないものに消耗し続けるという状況になりやすい。
さらに言えば、「直したい」という気持ちの多くは、外向型に最適化された環境から来ている。学校の授業は手を挙げて発言した人が評価される。職場の文化は雑談やランチで関係が作られる。SNSはリアクションが多い人が注目される。そういう設計の中にいると、内向的な人は自分が「劣っている」と感じやすい。でもそれは環境の設計の問題であって、内向性そのものの問題ではない。
内向性は「欠陥」ではなく「設計の違い」
ビッグファイブ心理学では、内向性・外向性は「外向性(Extraversion)」という因子のスコアで測定される。スコアが低い人を「内向型」と呼ぶ。そしてこれは、良い・悪いの軸にある特性ではなく、刺激の処理の仕方の違いを表している。
外向性の高低に関係する生物学的な違いは、神経科学によってかなりはっきりしている。アメリカの心理学者エリン・ペイリスの研究によると、外向型と内向型では脳内の報酬系の反応パターンが異なる。外向型は社会的な刺激(他者との交流、新しい人との出会い)に対してドーパミン報酬系が活性化しやすく、内向型はそれほど活性化しない。これは「外向型の方が感情豊か」という話ではなく、単純に「どこから活力を得るか」の違いだ。
内向型の人は「孤独を好む変わり者」ではない。一対一の深い会話、少人数での議論、じっくり考える仕事に強くエネルギーを感じる人だ。大人数の場で消耗するのは、刺激の量が処理能力を超えているからで、社交性の欠如とは別の話だ。
さらに、外向性は双子研究によって遺伝率が40〜60%と推定されている。つまり、内向性の相当な部分は生まれついての傾向だ。これは「変えられない運命だから諦めろ」という意味ではなく、「自分の脳の特性を正しく理解した上で、どう生きるか考えよう」という意味に近い。
内向性を欠陥と見なす文化は、特に日本と欧米で微妙に異なる。アメリカ社会は外向型が非常に強く評価されるが、日本では「物静かで落ち着きがある」という内向型の特徴が場面によっては美徳とされることもある。ただ日本の職場文化は飲み会・雑談・根回しが重視されるため、内向型には別の消耗感がある。どちらの文化でも、内向型は「適応のコスト」を外向型より多く払いやすい環境に置かれていることは確かだと思う。
この記事の話は、ビッグファイブでいう「外向性」と関わりがあります。自分の外向性がどのくらいかは、5分で測れます。
自分の外向性を測る(無料・登録不要)性格はどこまで変えられるのか
「性格は変えられる」という主張と「性格は変えられない」という主張が、どちらも世の中に出回っている。実際のところ、答えは「ある程度変わるが、根幹は安定している」だ。
ビッグファイブの外向性スコアは、30歳以降になると特に安定する傾向がある。縦断研究(同じ人を長期間追いかける研究)を見ると、外向性のスコアは年齢とともに小幅に変動することはあるが、大きな変化はほとんど起きない。成人後に「根っからの内向型」が「根っからの外向型」になった事例は、研究上ほぼ存在しない。
ただし、行動レベルでは変化できる。外向性のスコアが低くても、人前で話す練習をすれば上手くなる。初対面の会話が苦手でも、会話の型を覚えれば以前より自然にこなせるようになる。緊張を感じやすい性質は変わらなくても、緊張したときの対処法を持てば結果は変わる。これはスコアが上がったのではなく、スキルが上がったのだ。
「性格を変えたい」という動機で行動を変えようとするより、「この状況でうまくやるための具体的なスキルを身につけたい」という動機の方が、実際に機能しやすい。なぜなら後者は、自分の特性を否定することなく、その特性の上に積み上げられるからだ。
内向型の人が「外向的に振る舞う」ことはできる。人前で話したり、積極的に会話に参加したりすることは訓練で改善される。ただそれは、外向型になったのではなく「外向型のように見える行動」を実行できるようになっただけだ。内側の消耗感は残る。それを無視して長期間続けると、燃え尽き症候群のリスクがある。
本当に変えるべきものは何か
「内向的な性格を直したい」という悩みを分解すると、実際に変えられるものが見えてくる。
変えられるもの1:コミュニケーションスキル。会話の始め方、質問の仕方、話を広げるパターン。これは純粋なスキルで、練習で伸びる。外向性のスコアとは関係なく、誰でも改善できる部分だ。「人と話すのが苦手」という感覚の多くは、実はスキルの問題を性格の問題だと誤解していることが多い。
変えられるもの2:環境の選び方。自分が消耗しやすい環境を把握し、できる範囲でそれを減らす。毎日の飲み会参加が義務ではないなら参加を減らす。オープンオフィスよりリモートワークの方が集中できるなら、そちらを選ぶ。仕事の選択肢がある段階で「自分が消耗しにくい場所はどこか」を考えるのは、性格を変えるより現実的だし、効果も大きい。
変えられるもの3:内向性の解釈。「自分は人付き合いが苦手なダメな人間だ」という自己評価は、変えられる。内向性の研究を知ると、「大人数の場でエネルギーを消耗する脳の傾向がある人間だ」という中立的な自己理解に変わる。これは自己肯定感の話ではなく、正確な自己認識の話だ。正確に自分を理解すると、無駄な自己否定が減る。
変えにくいもの:刺激に対する根本的な感度。大人数の場でエネルギーを消耗するという特性そのものは、大きく変えることが難しい。これを「克服」しようとして無理を続けると、疲弊だけが残る。消耗するという事実を受け入れた上で、回復の時間をどう確保するか、どの場面にどのくらいのエネルギーを使うかを管理する発想の方が機能する。
「直したい」という気持ちの奥にある本当の問題は何かを考えると、解決策が変わる。人前で話せるようになりたいなら、練習と場数の問題だ。職場で浮いていると感じるなら、環境と文化の問題かもしれない。そもそも自分が「おかしい」のではないかという不安があるなら、それは知識の問題で、内向性の科学を知るだけでかなり解消できる。
自分の外向性スコアを正確に知る
「内向的かどうか」という問いに対して、多くの人は感覚で答えている。「人付き合いが苦手だから内向的」「飲み会が嫌いだから内向的」。しかし実際には、外向性は5つの因子からなるビッグファイブの一つで、ざっくりとした感覚より細かく測定できる。
例えば、「人前で話すのは苦手だが、深い議論は好き」「知らない人との雑談は消耗するが、親しい人との会話は楽しい」という人は、外向性が低いというよりも外向性のどの側面が低いのかが重要になる。外向性にはいくつかの下位尺度(ファセット)があり、「他者との交流を求める傾向」「社会的な刺激を楽しむ傾向」「主導権を取りたい傾向」などが含まれる。これらが全部低い人もいれば、部分的に低い人もいる。
ビッグファイブ診断を受けると、外向性のスコアとともに他の4因子(誠実性・協調性・開放性・神経症性)も測定される。「内向的だから直したい」と感じている背景には、神経症性(不安傾向)が高いことが関係していることも多い。内向性そのものより、不安が大きくて行動を妨げているというパターンだ。自分のスコア全体を見ると、「何が問題で、何は問題ではないか」がよりはっきりする。