「自分勝手な人」と言われる、よくある場面

みんなで決めるはずの旅行の予定を、ひとりで決めて「もう予約しておいた」と言う。会議では自分の案ばかり話し、ほかの人の意見を聞く前に話をまとめてしまう。頼まれた仕事は後回しにするのに、自分の頼みごとはすぐにやってほしがる。こうした人は、周りから「自分勝手な人」「自己中な人」と呼ばれます。

自分勝手な人の特徴としてよく挙がるのは、相談せずに決める、自分の都合を優先する、相手の事情を聞かないといったものです。行動力があって頼もしく見える場面もある一方で、周りは振り回されて疲れてしまいます。

人を意図的に操る傾向はダークトライアドとはで、素直になれない心理はプライドが高い人の心理で取り上げました。この記事では、悪気はないのに、なぜか自分の見方から抜け出せない人に注目して、その心の中を考えます。

自分勝手な人の多くは、周りを困らせたいわけではない。
相手から世界がどう見えているかを、想像しきれていないのだ。

一つの印象で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、人との関わり方や気持ちの動き方を振り返れます。

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人はまず「自分の見方」から相手を考える

Epleyらは、人が他人の立場を想像するときに、心の中で何が起きているのかを五つの研究で調べました。その結果、人はまず自分の見方を出発点にして、そこから少しずつ相手の見方へずらしていくことが分かりました。[1]

たとえば、相手の感じ方が自分と違うと答えるときは、同じだと答えるときよりも時間がかかりました。さらに、このずらし方は足りないまま止まりやすいことも示されました。「たぶんこうだろう」と思える答えにたどり着いた時点で、それ以上考えるのをやめてしまうからです。

注目したいのは、時間に追われると、自分中心の見方が強くなったことです。反対に、正確に当てるとごほうびがもらえる条件では、自分中心の見方は弱まりました。つまり、自分勝手に見えるふるまいの一部は、性格の悪さではなく、急いでいて相手の立場まで考える余裕がないときに起こりやすいのです。

立場が上になると、相手の見方が見えにくくなる

Galinskyらは、「自分には力がある」と感じている状態が、相手の立場に立つことにどう影響するかを調べました。[2]

ある実験では、参加者に自分のおでこにアルファベットの「E」を書いてもらいました。すると、力のある立場を思い出した人ほど、向かいの人から見て読める向きではなく、自分から見て読める向きに書きやすかったのです。ほかの実験でも、力のある立場の人は、自分が知っていることを相手は知らないという点を考えに入れにくく、相手の表情から気持ちを読み取る正確さも下がっていました。

上司や親、先輩など、決める立場にいる人が自分勝手に見えやすいのは、このためかもしれません。決める力を持つと、相手の見え方を確かめなくても物事が進んでしまうので、相手の視点に立つきっかけが減っていきます。

協調性と「人のために動く気持ち」

1. 協調性が高い人:相手の役に立ちたいという気持ちが強く、場面や相手を問わず手を貸しやすい。

2. 協調性が低い人:人のために動く気持ちが弱めになりやすい。

Grazianoらは、協調性と人助けの関係を、いくつもの研究で調べました。その結果、人のために動きたいという気持ちは、ビッグファイブの協調性と結びついていて、さまざまな場面や相手に対する人助けにつながっていました。[3]

意外だったのは、もともと人のために動く気持ちが弱い人に対して、助ける負担が大きい場面で「相手の気持ちを想像して」と促すと、かえって助けなくなることがあったという結果です。自分勝手な人に「相手の気持ちを考えなさい」と言い聞かせても、うまくいかないことがあるのはこのためかもしれません。

ただし、協調性が低いことは欠点だけではありません。周りに流されずに意見を言えたり、言いにくいことを伝えられたりする強みでもあります。協調性が低い人の特徴も、あわせて参考にしてください。

自分勝手な人との付き合い方、自分がそうかもと思ったら

自分勝手な人と付き合うときは、「察してくれるはず」と期待せず、自分の都合を具体的に言葉にすることが大切です。相手は悪気なく、こちらの事情が見えていないだけかもしれません。「その日は予定がある」「この作業には三日かかる」と、相手の頭の中にない情報を先に渡しましょう。

大事なことを決める場面では、「決める前に一度相談してほしい」と順番を約束しておくのも効果的です。相手の気持ちに訴えるよりも、相談する手順そのものを決めておくほうが、負担が少なく続きやすくなります。それでも振り回され続けるなら、関わる場面を減らして距離をとることも、自分を守る大切な選択です。

反対に、自分が自分勝手かもしれないと感じる人は、決める前に「相手からはどう見えているか」を一つだけ確かめることから始めてみてください。急いでいるときや、自分が決める立場にいるときほど、相手の見方は見えにくくなります。「この予定で大丈夫?」と一言聞くだけでも、相手の受け取り方は大きく変わります。場の空気がつかみにくい場合は、空気が読めない人の心理も参考になります。

「自分勝手な人」と決めつけない

自分勝手に見える行動の裏には、時間の余裕のなさや、立場による見え方の違いがあることも少なくありません。一度の行動だけで、その人のすべてを判断しないようにしましょう。

一方で、相手の自分勝手さに長く振り回されて、眠れない、気持ちが沈むといった状態が続くときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話してみてください。

自分勝手さの多くは、相手の見え方を想像しきれていないことから生まれます。その仕組みを知っておくと、相手にも自分にも、少し落ち着いて向き合えます。

印象ひとつで、人柄を決めない

ビッグファイブ診断は、協調性を含む五つの傾向を振り返る道具です。だれかが自分勝手な人かどうかを判定する検査ではありません。

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参考にした研究

  • Epley N, Keysar B, Van Boven L, Gilovich T(2004)Perspective taking as egocentric anchoring and adjustment. Journal of Personality and Social Psychology, 87(3), 327–339. DOI
  • Galinsky AD, Magee JC, Inesi ME, Gruenfeld DH(2006)Power and perspectives not taken. Psychological Science, 17(12), 1068–1074. DOI
  • Graziano WG, Habashi MM, Sheese BE, Tobin RM(2007)Agreeableness, empathy, and helping: A person × situation perspective. Journal of Personality and Social Psychology, 93(4), 583–599. DOI