未来の一日は、実際より広く見える
来週の土曜日を思い浮かべると、朝に掃除をして、昼に買い物へ行き、夕方は勉強もできそうに見える。頭の中では、それぞれが順番よく始まり、予定どおりに終わる。けれど当日には、起きるまでの時間、探し物、返信、移動、片づけ、少しぼんやりする時間が入る。計画に出てこなかった小さな用事が、一日の幅を使っていく。
Buehler、Griffin、Ross(1994)は、人が自分の作業の完了時間を予測するとき、過去の似た経験より、これから順調に進む筋書きへ注意を向けやすいことを示した。予測はさまざまな課題で楽観的になったが、過去の経験を今回の予測と結びつけるよう促されると、その偏りは小さくなった。これは一般に「計画錯誤」と呼ばれる。
ただし、この研究は「予定を詰める人の性格」を診断したものではない。予定が崩れる理由には、仕事、家族、体調、交通、急な連絡など外側の事情もある。ここで使えるのは、未来の自分が順調に動く前提だけで予定を組むと、使える時間を多く見積もりやすい、という部分だ。
予定を減らす前に、過去の実績を見る
「次は早くできるはず」ではなく、「前回は準備から片づけまで何分だったか」を使う。同じことをした記録がなければ、最初の一回は見積もりを当てる日ではなく、測る日にする。
移動・切り替え・休憩が予定から消える
予定表には「買い物一時間」「勉強二時間」と書いても、出かける支度や帰宅後の片づけは書かないことが多い。仕事から家事へ、家事から勉強へ移るときには、道具だけでなく気持ちの切り替えも要る。五分で済むつもりの連絡が二十分になることもある。予定そのものではない時間をゼロとして扱うと、一つずつは無理のない計画でも、全体では苦しくなる。
詰め込みやすい人ほど、やりたいことが多い場合もある。興味のあることを諦めたくない、人との約束を大事にしたい、休みに遅れを取り戻したい。動機は悪くない。問題は、全部を同じ日に実行しようとすると、少し遅れた予定が次の予定の開始時刻を奪い、その日全体が「遅れている時間」になることだ。
KooleとSpijker(2000)の実験では、「いつ・どこで課題をするか」を決める実行意図を作った参加者は、実際の完了率が上がり、楽観的な完了予測とのずれも小さくなった。研究は一つの課題を扱ったもので、休日の過ごし方すべてにそのまま当てはまるとは限らない。それでも、やることを増やすより、開始する条件を一つ決める方が役立つ可能性を示している。
「土曜に片づける」ではなく、「朝食の食器を下げたら、机の上だけを十五分片づける」とする。終わったあとに十分の空白を置く。予定は、作業時間だけでなく、始めるまでと終わったあとまで含めて一枠にする。
この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。
ビッグファイブ診断を受ける(無料・登録不要)余白は、余った時間ではなく予定の一部
予定がすべて終わったら休もう、と考えると、休息はいつも最後に回る。終わらなかった用事があれば消え、終わっても次にできることを探してしまう。余白を確保するには、休みを「何もしなかった時間」ではなく、次の予定へ戻るために必要な時間として先に置く必要がある。
SonnentagとFritz(2007)は、仕事から回復する経験を調べ、心理的に仕事から離れること、リラックス、何かを身につける感覚、自分で時間を選べる感覚という四つを区別した。これらは仕事の負担や心の状態と中程度の関連を示し、性格との関連は全体として弱かった。つまり、休めるかどうかを「自分はそういう性格だから」で終わらせず、時間の使い方として考える余地がある。
余白の使い方は自由でいい。予定が押したら吸収する。順調ならお茶を飲む。何もしない、短く歩く、音楽を一曲聴く。大切なのは、その時間に別の用事を予約しないことだ。最初から一日の二割を空けるのが難しければ、予定と予定の間に十五分だけ置く。三つの予定なら、二つの余白ができる。
予定が崩れても、自分を責めずに戻るための時間だ。
性格に合わせて余白の置き方を変える
ビッグファイブの誠実性が高い人は、計画を立てて守ることに満足を感じやすい傾向がある。一方で、予定が崩れたときに「立て方が悪かった」と自分を厳しく評価する人もいる。開放性が高い人は、新しい体験を同じ日にいくつも入れたくなるかもしれない。協調性が高い人は、自分の休みより頼まれごとを優先することがある。
ただし、因子の点数だけで「予定を詰める人」とは判断できない。同じ高い誠実性でも、余裕を含めて緻密に組む人もいれば、達成項目を増やす人もいる。予定の量には、生活環境や責任の重さが大きく関わる。診断結果は原因の断定ではなく、自分がどこで予定を増やしやすいかを探す質問として使う。
達成感が好きなら、余白にも「回復時間」と名前をつけて完了項目にする。新しいことを詰め込みやすいなら、候補を全部予定にせず、「当日一つ選ぶ」枠にまとめる。頼まれると断りにくいなら、返事の前に予定表ではなく、余白まで含めた一日を見る。気分に左右されやすいなら、元気な日の見積もりを標準にしない。
一日の合格を一つにする
予定を立てるとき、最初に「今日これができれば合格」を一つ決める。残りは、できたらうれしい候補へ移す。全部を同じ重要度にしないだけで、一つの遅れが一日全体の失敗になるのを防げる。
次に、作業時間を過去の実績から置く。そこへ移動、準備、片づけを足す。さらに予定の間を十五分空ける。予定表に空白があると、もっと入れられるように見えるが、その空白には「遅れを吸収する」「休む」「次を選ぶ」という仕事がある。
最後に、終わらなかったときの移し先を決める。「今日できなければ日曜の午前へ」「今週できなければ削除する」。先送り先が無限に増えるなら、予定を移すのではなく、やらない決定も必要になる。予定表は自分を追い立てる一覧ではなく、限られた時間を何に渡すか決める場所だ。
予定を詰める人は、時間を無駄にしたいのではない。むしろ一日を大事に使いたいから、できることを多く入れる。だからこそ、余白を「使わない時間」と考えない方がいい。次の予定を気持ちよく始めるために使う時間、一つ遅れても一日を壊さないための時間として先に確保する。
明日の予定を直すなら、全部を消す必要はない。合格を一つ選び、予定の間に十五分を置く。見積もりは前回に合わせる。空いたら、そのとき初めて候補から一つ選ぶ。余白のある予定は、何もしない計画ではない。実際の自分が動ける幅まで、未来の一日を正しく小さくする計画だ。
自分が予定を増やしやすい理由を知ろう
性格を予定の詰めすぎの言い訳にせず、どんな場面で余白を消しやすいかを知る材料として、ビッグファイブを測ってみてください。
参考にした研究
- Buehler R, Griffin D, Ross M(1994)「Exploring the planning fallacy: Why people underestimate their task completion times」DOI
- Koole SL, Spijker M(2000)「Overcoming the planning fallacy through willpower: effects of implementation intentions on actual and predicted task-completion times」Wiley Online Library
- Sonnentag S, Fritz C(2007)「The Recovery Experience Questionnaire: development and validation of a measure for assessing recuperation and unwinding from work」PubMed