スコアが出たあとに訪れる『で、どうすれば』
ビッグファイブの診断を終えて一番困るのは、結果が出たところで案内が終わってしまうことだ。「外向性が低めです」「神経症傾向が高めです」と示される。そして、それをどう扱えばいいのかは教えてくれない。
ここで結果を『当たる・当たらない』で確認して終わる人が多い。でも、それだと診断の価値を半分も使えていない。ビッグファイブの結果は、自分を理解するための素材であって、結論ではない。素材の読み方が分からないと、せっかくのデータが『まあまあ当たる』で蒸発してしまう。
例えば『協調性が低め』という結果が出たとする。これだけを見て『人と合わないんだな』『直した方がいいのかな』と落ち込む人がいる。でも協調性の低さには、集団に流されない、ハッキリ断れる、対立を恐れず意見を言えるという側面もある。結果の読み方一つで、同じ数字が弱みにも強みにもなる。
だから結果を受け取ったら、次にすることは『直す』ではなく『読む』ことだ。それぞれの数字が何を意味し、どう組み合わさり、どう生かせるのか。その読み方を知ると、5本のバーが急に自分ごとになってくる。
バーと%が表している『相対的な位置』
まず誤解しやすいのが、%の意味だ。『神経症傾向78%』は、神経質さを100点満点で採点して78点だった、という意味ではない。自分と同じ年代・同じ性質の集団の中で、相対的にどのあたりに位置しているかを表している。
分布の形を想像すると分かりやすい。大半の人は真ん中付近に集まっていて、極端に高い人と極端に低い人は両端に少数いる、緩やかな山の形だ。つまり50%前後の人が一番多く、その前後の10ポイントくらいは『だいたい普通の範囲』と考えていい。
ここで大切なのは、真ん中が厚いということだ。45%と55%の間に、性格の大きな差はない。誤差の範囲と言ってもいい。だから『55%だから高い』『45%だから低い』とピリピリ読む必要はない。中間の広い範囲は、個性というほどの偏りはないというサインだ。
読みどきになるのは、数字が極端に偏っているところだ。70%を超えていれば『かなり高め』、30%を下回っていれば『かなり低め』と、はっきり傾向が出る。まずは5本の中で、一番上に突き出ているバーと、一番下に下がっているバーを見つける。そこが自分の最も特徴的なところで、読み解きはそこから始めるのが一番効く。
同じ集団の中での『相対的な位置』。
この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。
ビッグファイブ診断を受ける(無料・登録不要)『高い=良い、低い=悪い』ではない
結果を見て一番よくある勘違いが、点数の高低で良し悪しを判断してしまうことだ。『誠実性が高い、よかった』『外向性が低い、直さなきゃ』。でもビッグファイブには、良い因子と悪い因子はない。
どの因子にも表と裏がある。外向性が高い人は話しやすく人気が出やすいが、その分衝動的に動いたり、一人の時間が苦手になったりしやすい。誠実性が高い人は真面目で信頼されるが、こだわりが強くなり、臨機応変さに欠ける場面もある。協調性が低い人は衝突が増えるが、それは集団圧力に流されない力、理不尽に断れる力でもある。
つまり、高低は優劣ではなく、性質の偏りでしかない。エネルギーの出る方向が違うだけだ。だから結果は『直すべき弱点リスト』ではなく『自分の特性の地図』として読む。この傾向があるから、こういう場面では強みが出て、こういう場面では弱みが出る、という読み方。
この地図の読み方が分かると、『自分を変えなきゃ』という重い気持ちが少し軽くなる。性格そのものを変えるのは難しいが、置かれる場面や役割を変えることはできる。自分の傾向に合う場所を選べば、同じ性格でも結果は変わってくる。結果の数字は、その場所選びの材料になる。
単体でなく、組み合わせで読む
因子を一つずつ独立して読むと、本当の姿が見えない。ビッグファイブの面白さは、組み合わせで読むことで解像度が一気に上がるところにある。
例えば『外向性が高い』だけだと、社交的な人、という単純な読みになる。でも『外向性が高くて、誠実性が低い』と、楽しく動き出せるけれど最後までやり切るのが苦手、という傾向が浮かび上がる。『外向性が高くて、協調性も高い』なら、人数の多い現場や接客で力を発揮しやすい人になる。同じ『外向性が高い』でも、隣にある因子で全然違う人が出てくる。
神経症傾向も同じだ。単体で読むと『不安が強い人』になる。でも『神経症傾向が高くて、誠実性が高い』は、不安を念入りな準備に変えられる人だ。先回りして失敗を防ぐ力になる。『神経症傾向が高くて、協調性が高い』は、人の気持ちに敏感で、場の空気を素早く読める人になる。不安の強さは、組み合わせ次第で慎重さにも、思いやりにもなる。
だから自分の結果を読むときは、一番高かった因子と、二番目に高かった因子を掛け合わせてみてほしい。そして、一番低かった因子も見る。強い二つの因子がどう響き合い、弱い因子がどこで響くのか。そこに『自分らしい強み』と『よくつまずく場所』のセットが隠れている。五つの数字を順位付けして一喜一憂するより、掛け合わせで自分のパターンを一つ見つける方が、はるかに実用的だ。
結果を日常に生かす3つの視点
結果が読めるようになったら、次は生かし方だ。三つの視点を持っておくと、手元の数字が生活の道具に変わる。
一つ目は、場面を選ぶこと。自分の強い因子が生きる場面に多く立ち、弱い因子が響く場面には工夫を入れる。外向性が高いなら人と動く仕事や役割を増やす。低いなら集中できる時間と場所を確保する。誠実性が高いなら締め切りや品質を管理する役を、低いなら発想を広げる役を担う。自分の傾向に合う場面では、無理しなくても力が出る。
二つ目は、人に任せること。自分の低い因子を無理に補おうとするより、それが高い人と組む方が早い。誠実性が低い人は、高い人にスケジュールや確認を見てもらう。協調性が高くて断れない人は、低い人に『断る役』を頼む。性格の違う人と組むとき、補い合える関係が作れる。
三つ目は、言い訳ではなく理由に使うこと。ここが一番気をつけたい点だ。『神経症傾向が高いから無理』『外向性が低いからできない』と結果を言い訳にすると、動けなくなってしまう。逆に『神経症傾向が高いから、準備をいつもより厚くしよう』『外向性が低いから、事前に話す内容をメモしておこう』と、結果を行動の理由に変えると、自分をうまく使えるようになる。
結果は自分を責めるためのデータではなく、自分をうまく使うためのデータだ。5本のバーの読み方を知ると、性格が『与えられた運命』から『扱える道具』に変わっていく。