「開放性が高い」だけで終わらせていいのか
開放性のスコアが高い人が二人います。一人は空想に何時間も浸り、小説を書き、想像の世界で生きているタイプ。もう一人は物語を一つも書いたことがないけれど、見知らぬ国へ旅するのが好きで、社会的な慣習に疑問を投げかけるタイプ。
二人ともビッグファイブのテスト結果では「開放性:高」と出ます。でも実際の性格はまったく違います。一人は想像力と感情性のファセットが突出していて、もう一人は冒険性と自由主義のファセットが高い。因子スコアはその平均値なので、この違いが打ち消し合って同じ「高」という結果になっているのです。
因子スコアは便利な要約です。全体像を素早く把握するには役立ちます。でもその反面、一人ひとりの性格の持つ粒度を平均化してしまいます。「外向性が高い」「協調性が低い」という結果を見て「わかったつもり」になる前に、その中にどんな違いが隠れているかを知っておくことが大切です。
そのためにあるのが、ファセット(下位尺度)という概念です。
ファセットとは何か
ビッグファイブの5つの因子は、それぞれ6つの下位次元に分かれています。この下位次元をファセット(facet)と呼びます。CostaとMcCraeが1990年代に開発したNEO PI Rという性格検査で、この構造が初めて定義されました。
5因子 × 6ファセット = 30のファセットが存在します。
因子スコアは、基本的にその6つのファセットの平均値です。日本の年平均気温が16度だからといって、夏と冬の気温の差がわからないのと同じように、因子スコアだけではファセット間の差が見えません。沖縄の冬と北海道の夏が同じ「年平均気温」にまとめられてしまうようなものです。
ファセットを見ることで、「外向性が高い」という結果が「友好性と群居性は高いけれど、主張性は低い」という具体的な性格像に変わります。この方がはるかに自分に当てはまるし、日常生活での行動とも一致しやすい。
因子レベルの分析でも大まかな傾向はつかめます。でも「なぜ自分は外向性が高いはずなのに、リーダーシップを取るのが苦手なんだろう」という違和感の正体は、ファセットを見ることで説明がつくことが多いです。
この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。
ビッグファイブ診断を受ける(無料・登録不要)30のファセット一覧
5つの因子それぞれに6つのファセットがあります。以下にすべて挙げます。括弧の中は、そのファセットが測っている問いのイメージです。
N 神経症性
- 不安 (心配事や不安を感じやすいか)
- 怒り (イライラや怒りを感じやすいか)
- 抑うつ (気分が落ち込みやすいか)
- 自己意識 (他人の目を気にするか)
- 無抑制 (衝動的に行動してしまうか)
- 脆弱性 (ストレスに圧倒されやすいか)
E 外向性
- 友好性 (友人を作りやすいか)
- 群居性 (大勢の中にいるのが好きか)
- 主張性 (自分からリードするか)
- 活動性 (常に活動的で忙しいか)
- 刺激追求 (スリルや興奮を求めるか)
- 陽気さ (明るく楽観的か)
O 開放性
- 想像力 (想像力や空想を楽しむか)
- 芸術的興味 (芸術や美に感応するか)
- 感情性 (感情を深く感じるか)
- 冒険性 (新しい体験を好むか)
- 知性 (知的な探求を好むか)
- 自由主義 (既存の価値観を問い直すか)
A 協調性
- 信頼 (他人を信用できるか)
- 道徳性 (他者を利用しないか)
- 利他性 (他者を助けたいと思うか)
- 協調性 (争いを避けるか)
- 謙虚さ (自分を控えめにするか)
- 共感性 (他人の悲しみに寄り添うか)
C 誠実性
- 有能性 (効率よく物事をこなせるか)
- 秩序性 (整理整頓が好きか)
- 義務感 (約束やルールを守るか)
- 達成努力 (期待以上の努力をするか)
- 自己規律 (計画を実行に移せるか)
- 慎重さ (考慮してから行動するか)
ファセットが見せる「同じ因子の中での違い」
因子スコアが同じでも、ファセットの組み合わせ次第で実際の性格は大きく異なります。具体例を3つ挙げます。
誠実性が高い人
秩序性は高いが慎重さは低い。机はピカピカ、スケジュール帳も完璧。でも衝動買いが多く、「あとで考えればよかった」と後悔することも少なくない。几帳面さと衝動性が同じ人の中に共存している。因子スコアだけではこの矛盾は見えません。
外向性が高い人
群居性は高いが主張性は低い。パーティーには喜んで参加するし、大勢でワイワイ過ごすのは大好き。でも自分から場を仕切ったり、意見を先頭に立って主張したりするのは苦手。「人には囲まれていたいけれど、リーダーにはなりたくない」というタイプです。
協調性が高い人
信頼は高いが謙虚さは低い。人は基本的に信じているし、裏切りにも寛容。でも自分の実績や能力についてはしっかりアピールする。「人を信じること」と「自分を控えること」は別のファセットなので、この組み合わせは自然に存在します。
この3つの例が示しているのは、「同じ因子が高い」二人でも、ファセットを見るとまったく違う性格像が浮かび上がるということです。因子スコアだけを見て「自分は誠実性が高いから几帳面で慎重な人間だ」と思い込むと、実際の自分の行動との間に違和感が生まれます。
ファセットは、その違和感を解消してくれます。因子スコアが隠している「中身の違い」を可視化する。それがファセットレベル分析の本当の価値です。
自分のファセットを測るには
ビッグファイブの診断には主に2つのバージョンがあります。10問版と120問版です。
10問版は5因子のスコアだけを出します。手軽で数分で終わりますが、ファセットの情報は含まれていません。「開放性:高」という結果は得られても、「想像力が高いのか冒険性が高いのか」はわからない。
120問版は30のファセットをすべて測定します。各ファセットにつき4問の設問があり、1〜5点のスコアが出ます。結果画面では因子ごとにファセットが並び、カラーバーで内訳が可視化されるので、「この因子の中でどのファセットが突出しているか」が一目でわかります。
所要時間は約15分。無料で、登録も不要です。ファセットレベルで自分の性格を理解したい場合は、120問版を受けるのが最も確実な方法です。
因子スコアを見て「なんか自分と違う気がする」と感じたことがある人は、ファセットを見ることでそのギャップが埋まるかもしれません。「外向性は高いけれど主張性が低い」という結果を見れば、「だから自分はパーティーは好きだけどリーダーにはなりたくないんだ」と腑に落ちる。