なぜ「正しい方法」なのに続かないのか

ダイエットの情報を探すと、カロリー制限、糖質オフ、インターバル fasting、プロテイン中心……色々な方法が出てくる。どれも理屈としては正しい。でも、やってもいないのに「これ合わないな」と感じたことないですか。

不思議なことに、合わないとわかっていても「正しいから」と続けてしまう。で、三日か一週間で挫折して、自分を責める。このループ、何度も繰り返してないでしょうか。

スポーツトレーナーをしていた頃、たくさんの人のダイエットを見てきた。そこで気づいたことがある。同じ方法でも人によって結果が全然違う。そして、その差は「意志が強いか弱いか」じゃなかった。

ある人にとっては週5回のジムが当たり前なのに、別の人にとっては週1回でも苦痛。ある人は一人でコツコツ記録を続けられるのに、別の人は誰かとやらないと三日で飽きる。これを「意志の差」と片付けるのは、あまりにも乱暴だ。

本当の理由はもっとシンプルで、その方法がその人の性格に合っていないだけ。

性格は生まれ持った気質と、これまでの経験で作られた傾向の組み合わせだから、そんなに簡単には変わらない。「もっと頑張れ」というアドバイスが絶対に効かない人もいる。そういう人に必要なのは頑張ることじゃなくて、自分の性格に合った方法を選ぶことだ。

ビッグファイブとは

ビッグファイブは、心理学の研究によって見つかった性格の5つの基本要素。開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向(感受性)の5つの軸で、人の性格をスコアで表す。

「あなたは外向的」とか「内向的」とか、タイプで分けるわけじゃない。「外向性は68点です」というように、どの程度その傾向があるかを数字で示す。だから「どっちか」じゃなくて「どのくらい」がわかる。

この5つのスコアの組み合わせによって、ダイエットに向いているやり方と向いていないやり方が変わってくる。同じ「ダイエットが続かない」悩みでも、感受性が高い人と誠実性が低い人では、続かない理由も解決策もまったく違う。

以下、5つの因子について「高い人」と「低い人」に分けて、それぞれの特徴とおすすめのダイエットアプローチをまとめた。

この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。

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感受性(神経症傾向)

感受性が高い人/低い人

感受性が高い人は、日々の小さなストレスを大きく受け止める。仕事で言われた一言、SNSで見た他人の投稿、天気が悪いこと、そういう日常のささいなことが蓄積して、夕方には心が疲れ果てている。その疲れを食欲で埋めようとする。これが感受性が高い人が太りやすい一番の理由だ。

逆に感受性が低い人はメンタルが安定している。感情的な食べすぎはほとんどしないし、ストレスでダイエットを投げ出すこともない。一見するとダイエットに向いているように見えるが、このタイプには別の落とし穴がある。「続けられる」が故に、効かない方法を何ヶ月も続けてしまうことがある。

誠実性(勤勉性)

誠実性が高い人/低い人

誠実性が高い人は、計画を立てて実行するのが得意。記録もきっちりつけるし、目標に向かってコツコツ進める力がある。研究データでも、誠実性が高い人はBMIが低い傾向がある。ダイエットに最も向いているタイプに見える。

でも現実には、このタイプが一番「詰まる」。完璧にやろうとしすぎて、少しでもズレたら「全部ダメだ」と思い込む。三日坊主ですらない。半日坊主だ。そして義務感で動き続けるうちに、いつの間にかダイエットが苦行になっている。

誠実性が低い人は逆に、計画を立てること自体に向いていない。「よし、明日から本気出す」と言い続けるパターン。でもこの人たちに必要なのは「もっと頑張れ」じゃなくて、意志力を使わなくていい環境を作ることだ。冷蔵庫にお菓子を置かなければ、食べる意志力はいらない。翌朝の運動着を枕元に置いておけば、着替える意志力はいらない。

外向性

外向性が高い人/低い人

外向的な人は一人でダイエットを始める。一週間くらいは頑張る。でも誰にも言ってないから、サボってもバレない。そう思った瞬間に、サボることが確定する。このタイプが続く条件はただ一つ、誰かがいることだ。

一方で内向的な人は、ジムに行こうとする。スタッフに挨拶される、マシンの使い方を聞かれる、隣の人と目が合う……それだけでエネルギーが尽きる。ジムが続かないのは意志の問題じゃない。あの空間がそもそも外向的な人向けに作られているからだ。

内向的な人の強みは、一人でコツコツ続けること。決まった時間に決まったことを淡々とやるのが苦じゃない。この強みを活かせる環境を選ぶことが、このタイプがダイエットを続ける鍵になる。

開放性

開放性が高い人/低い人

開放性が高い人は、新しいものに惹かれる。糖質オフ、断食、最新のサプリ、流行りのワークアウト……次々と試したくなる。問題は、一つの方法を続けられないことじゃない。次の方法に移るタイミングが早すぎて、どの方法も結果を出す前に投げ出してしまうことだ。

このタイプに「一つの方法を粘れ」と言っても無駄だ。性格なんだから。代わりに、「飽きる」ことを前提にスケジュールを組む。8週間ごとにメニューを変える。そうすれば、乗り換えることが「飽きてやめる」じゃなくて「次のフェーズに進む」になる。

開放性が低い人は、同じことを続けるのが得意。決まったメニュー、決まった時間、決まった運動。これ以上ないくらいダイエットに向いている。唯一の敵は停滞期だけ。ずっと同じことをしていると、体が慣れて効果が出なくなる時期が来る。そこで「変えること」が苦手なこのタイプは、効かなくなった方法をそのまま続けてしまう。

協調性

協調性が高い人/低い人

協調性が高い人は、空気を読む能力が高い。どんな場でも和を保とうとする。飲み会で「ダイエット中だから」と断るより、自分が我慢した方が場が壊れないと無意識に計算している。この「空気を壊さない能力」が、食事管理を根こそぎ崩す。

一人で食事を作っている時はヘルシー。スーパーで買い物している時も無駄遣いしない。でも職場でお菓子が回ってきたら食べる。友人にご飯に誘われたら断らない。帰り道で「またやってしまった」と思う。でも次も同じ。協調性の高さが、自分の食事をコントロールする力を上回っているからだ。

協調性が低い人は、他人の意見に耳を貸さない。自分がいいと思った方法しかやらない。これは一見すると頑固で問題ありそうに見えるけど、実は「自分に合った方法を徹底的に探して最適化する」強みになる。ただ、科学的な根拠を無視して自己流に走ると、長期的には体重が増える傾向がある。

「本当に痩せたいのか」という問い

ここまで10個のタイプを見てきた。自分に当てはまるものがあったでしょうか。

ただ、性格タイプに合った方法を見つける前に、一つだけ確認しておきたいことがある。

トレーナーをしていた頃、ダイエットに来る人の大半は「本当は痩せたくない」ということに気づいた。裏技を探し続けて、「この人が痩せてるのは裏技を知ってるからじゃないか」と思ってお金を払ってくる。裏技がないとわかると、言い訳して終わる。本当に病気で死ぬ寸前になると、みんな急に痩せる。

これは性格の問題じゃない。世の中の文化や傾向に騙されて、「やらなきゃいけない」と思い込んでいるだけ。SNSもテレビも雑誌も、みんな「痩せた方がいい」という空気を作っている。その空気に乗せられて、「自分も痩せなきゃ」と思っているだけで、本当は別にどうでもいいのかもしれない。

本当に痩せたいのか、それとも「痩せた方がいい」と思い込んでいるだけなのか。

この問いに正直に答えられると、ダイエットの悩みの半分くらいは消える。やりたくないことをやろうとしているから苦しいだけで、本当にやりたいことなら性格に合った方法は自然と見つかる。

それでも「いや、本当に痩せたい」と思うなら、あなたの性格に合った方法をこの記事から見つけてほしい。70点で続けた3ヶ月の方が、完璧に実行した一週間より体は確実に変わる。