人の話を聞かない人に、よくある場面
説明したはずなのに「聞いてない」と言われる。返事はしていたのに、あとで内容を覚えていない。こちらが話している間、ずっとスマートフォンや画面を見ている。人の話を聞かない人と話すと、何度も同じことを言うことになり、こちらばかりが疲れてしまいます。
人の話を聞かない人の特徴としてよく挙がるのは、うなずきや「うん」が早すぎる、目線が別のものに向いている、あとで同じ質問をしてくる、といったものです。
「聞かない」にもいくつか種類があります。話の途中で口を挟む場合は話を最後まで聞かない人の心理で、意見を受け入れない場合は頑固な人の心理で取り上げました。この記事では、耳では聞いているのに、中身が頭に入っていない場合を考えます。
注意が、目の前の話から離れていることが多い。
一つの態度で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、普段の考え方や人との関わり方を振り返れます。
自分の五つの性格を測る(無料)心は、思ったより目の前から離れている
KillingsworthとGilbertは、スマートフォンを使って、日常のさまざまな時間に「今、何をしているか」「今、何を考えているか」を人々に尋ねました。その結果、人は目の前で起きていないことを考えている時間が、起きていることを考えている時間とほぼ同じくらいあることがわかりました。[1]しかも、そうして心がよそへ向いているとき、人はたいてい幸せを感じにくくなっていました。
つまり、話を聞きながら別のことを考えてしまうのは、特別な人だけの問題ではありません。仕事の締め切り、さっき届いたメッセージ、夕飯の段取り。頭の中がいっぱいの人ほど、耳に入った言葉が素通りしやすくなります。
聞いていない人は、わざと無視しているのではなく、自分でも気づかないうちに注意がよそへ行っていることが多いのです。本人は「ちゃんと聞いていた」と思っているので、指摘されると驚いたり、むっとしたりします。
よくあるのが、早すぎるうなずきです。「うん、うん」と相づちは打っているのに、目は別のところを見ている。相づちは、聞いているしるしというより、会話を止めないための習慣になっていることがあります。話す側は、相づちの多さではなく、話の中身についての質問や言い返しがあるかどうかを見ると、本当に届いているかがわかりやすくなります。
スマートフォンは、置いてあるだけで会話を浅くする
PrzybylskiとWeinsteinは、二人で話をしてもらう実験で、そばに携帯電話が置いてあるかどうかによって、会話がどう変わるかを調べました。携帯電話がそばにあるだけで、二人の親しさや、つながりの感覚、会話の質が下がりやすく、その差は大切な話題を話したときに特にはっきりしていました。[2]
実際に画面を見ていなくても、通知が来るかもしれないという気配が、注意の一部を持っていきます。話を聞かない人の手元にいつも画面がある場合、その人の性格より、聞く環境のほうが邪魔をしていることもあります。
反対に、聞くことは練習で変わります。Itzchakovらは、職場の人たちに聞き方の研修を受けてもらい、受けなかった人たちと比べました。研修を受けた人たちは、研修の直後も3週間後も、同僚とのつながりを強く感じ、燃え尽きや辞めたい気持ちが低くなっていました。[3]聞き方は、生まれつき決まっているものではないということです。
話を聞いてもらうための伝え方
1. 話し始める前に、注意をこちらへ向けてもらう:「今、2分だけいい?」と一声かけてから話すと、相手は頭を切り替えやすくなります。画面を伏せてもらうのも一つの方法です。
2. 大事なことは最初に一つだけ言う:前置きが長いと、肝心なところで注意が切れてしまいます。「結論から言うと」と先に伝え、細かい話はあとにします。
3. 最後に相手の言葉で確かめる:「念のため、何をいつまでにするか言ってもらえる?」と聞くと、聞き流していた部分がその場でわかります。責める調子ではなく、確認として頼むのがこつです。
仕事の指示や約束ごとは、話したあとにメールやメモでも残しておくと、「聞いてない」の行き違いを減らせます。家族やパートナーとの間で、大事な話ほど聞いてもらえないと感じる場合は、落ち着いて話せる時間をあらかじめ決めておくのも有効です。
反対に、自分が人の話を聞けていないと感じる人は、相手が話している間だけ画面を伏せる、話の最後に一言だけ要点を言い返す、という二つから始めてみてください。
「聞かない性格」と決めつけない
「人の話を聞かない人は自分勝手だ」と言われることもありますが、日常で人の話を聞くかどうかを、一つの性格の特徴で言い当てられる確かな研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。同じ人でも、疲れているとき、心配ごとがあるとき、画面がそばにあるときには、聞く力が落ちます。
ただし、本人も困るほど話が頭に入らない状態が長く続く、聞き返しが急に増えた、という場合は、聞こえ方や注意の働きそのものに理由があることもあります。気になるときは、性格の問題と決めつけず、医療機関で相談してみてください。
聞いていないのは、注意が離れているサインでもあります。相手の人柄を責めるより、注意を向けてもらう一言と、確かめる一言を習慣にすることが、いちばん確かな近道です。
聞き方ひとつで、人柄を決めない
ビッグファイブ診断は、協調性や誠実性を含む五つの傾向を振り返る道具です。相手が話を聞かない理由を判定する検査ではありません。
参考にした研究
- Killingsworth MA, Gilbert DT(2010)A wandering mind is an unhappy mind. Science, 330(6006), 932. DOI
- Przybylski AK, Weinstein N(2013)Can you connect with me now? How the presence of mobile communication technology influences face-to-face conversation quality. Journal of Social and Personal Relationships, 30(3), 237–246. DOI
- Itzchakov G, Weinstein N, Cheshin A(2023)Learning to listen: Downstream effects of listening training on employees' relatedness, burnout, and turnover intentions. Human Resource Management, 62(4), 565–580. DOI