人のせいにする人に、よくある場面

仕事のミスが見つかると「聞いていなかった」「あの人の指示が悪かった」。家では、遅刻したのを「起こしてくれなかったから」。うまくいかないことがあるたびに、原因が自分以外に向かう人がいます。言われた側は、責任を押しつけられたようで、もやもやが残ります。

人のせいにする人の特徴としてよく挙がるのは、失敗の話になると早口で事情を並べる、自分の関わった部分には触れない、うまくいったときは自分の手柄として話す、といったものです。

ただ、本当に他の人や仕組みに原因があることもあります。指示があいまいだった、情報が回ってこなかった、という指摘が正しい場合もあるので、「また人のせいにしている」と最初から決めつけると、大事な問題を見逃すことにもなります。

ここで挙げるのは、やりとりを整理するための見方です。誰かの性格を判定するチェック表ではありません。

人のせいにするのは、特別な人だけではない。
誰にでもある心のくせが、強く出ている状態と見る。

一つの口癖で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、普段の考え方や人との関わり方を振り返れます。

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成功は自分、失敗は周り:多くの人にある心のくせ

うまくいったことは自分の力、うまくいかなかったことは周りや運のせいと考えやすい傾向は、心理学で「自己奉仕バイアス」と呼ばれています。Mezulisらは266の研究をまとめて分析し、この傾向がほぼすべての対象者で見られ、その大きさもかなり大きいことを示しました。[1]

同じ分析では、アジアの対象者ではこの傾向が欧米より小さいことや、年齢によって強さが違うことも報告されています。人のせいにしやすいかどうかは、本人の性格だけでなく、文化や年齢、置かれた状況によっても変わるということです。

Shepperdらの総説によると、この傾向には、自分を守りたいという気持ちと、物事の原因を推測するときの考え方のくせの両方が関わっていると考えられています。[2]以前は「自分を守るため」か「考え方のくせ」かが議論されてきましたが、二つは別々ではなく、一緒に働いて「よい結果は自分のおかげ、悪い結果は自分のせいではない」という結論に導くことが多い、というのが総説の見方です。

つまり、人のせいにする人は、わざと嘘をついているとは限りません。本人には、本当にそう見えていることも多いのです。

責められる場では、人は原因を外に探しやすい

Edmondsonは、製造業の会社の51のチームを調べ、「このチームでは失敗を口にしても責められない」という共通の感覚(心理的安全性)があるチームほど、周りに意見を求めたり、やり方を見直したりする「学習行動」が多く、その学習行動を通じて成果も高くなることを示しました。[3]

裏を返せば、ミスをすると強く責められる職場や家庭では、自分の非を認めることが大きな損になります。その結果、原因を外に向けたり、言い訳を重ねたりする行動が増えやすくなります。人のせいにする癖は、その人の性格だけでなく、周りの空気が育てている面もあるのです。

これは職場に限りません。家庭でも、小さな失敗を強く叱られ続けた子どもは、怒られないために「お兄ちゃんがやった」「知らなかった」と言うことを覚える場合があります。大人になってからの人のせいにする癖も、もともとは身を守るために身につけたやり方だった、という見方ができます。

ここで大切なのは、相手を甘やかすことではありません。責任の所在をはっきりさせつつ、認めた人が必要以上に損をしない形を作ることです。

人のせいにされたときの対処法

1. 「誰が悪いか」より「何が起きたか」を先に聞く:「いつ、どの段階で、何がずれたか」を一緒に時系列で並べると、相手は身構えにくくなり、自分の関わった部分にも目が向きやすくなります。

2. 事実と解釈を分けて記録する:職場なら、指示や約束をメールやメモで残しておくと、言った言わないの争いを減らせます。自分を守る手段にもなります。

3. 次にどうするかで話を終える:責任を認めさせることにこだわるより、「次はこの時点で確認しよう」と決めて終えるほうが、同じことが起きにくくなります。

何度話しても毎回自分のせいにされる、事実と違う話を周りに広められる、といった場合は、一人で抱えずに上司や第三者に記録とともに相談してください。言い訳が多い相手への聞き方は、言い訳が多い人の心理でも詳しく紹介しています。

反対に、自分がつい人のせいにしてしまうと感じる人は、失敗の話をするときに「自分の側でできたことは何か」を一つだけ先に言ってみると、相手の受け取り方が大きく変わります。

「人のせいにする性格」と決めつけない

「人のせいにする人は自己中心的だ」と言われることもありますが、日常で人のせいにするかどうかを、一つの性格の特徴で言い当てられる確かな研究は、今回調べた範囲では見当たりませんでした。

新しい道具やAIが加わると、今度はそのせいにする、ということも起こります。この点は人のせいにしていた人は、次はAIのせいにするで取り上げました。

原因を外に探すくせは、誰にでもあります。相手を変えようとするより、起きたことを一緒に並べる習慣と、認めても責められすぎない場を作ることが、いちばん確かな近道です。

口癖ひとつで、人柄を決めない

ビッグファイブ診断は、協調性や神経症傾向(情緒の揺れやすさ)を含む五つの傾向を振り返る道具です。相手が人のせいにする理由を判定する検査ではありません。

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参考にした研究

  • Mezulis AH, Abramson LY, Hyde JS, Hankin BL(2004)Is there a universal positivity bias in attributions? A meta-analytic review of individual, developmental, and cultural differences in the self-serving attributional bias. Psychological Bulletin, 130(5), 711–747. DOI
  • Shepperd J, Malone W, Sweeny K(2008)Exploring causes of the self-serving bias. Social and Personality Psychology Compass, 2(2), 895–908. DOI
  • Edmondson A(1999)Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383. DOI