同じ笑いに見えても、中身は三つに分かれる

小さな言い間違いを本人も一緒に笑い、固かった空気がほどける。これは相手を下に置く笑いとは限らない。「誰にでもある」と共有する笑いには、失敗から立ち直りやすくする働きもある。

驚いたときや緊張したときに、意図せず笑いが出る人もいる。口元だけを見て「不幸を喜んだ」と判定するのは早い。本人より先に失敗を言いふらしたか、片づけを手伝ったか、謝ったかまで見ると、笑いの向きが分かりやすい。

一方、自分より評価されている人が失敗したときだけ、ほっとしたように笑うことがある。ここでは、相手の不運よりも比べられて苦しかった自分が、少し救われた感覚が近い。

もう一つは、「当然の報いだ」という笑いである。人をだましていた人が信用を失うなど、失敗を罰や正義の回復として受け取る。快感には違いないが、ただ弱い相手を見下すのとは動機が違う。

笑ったかどうかだけでなく、
誰の、どんな失敗に、なぜ笑ったかを見る。

ただし、事故、病気、喪失、いじめなどの深刻な被害は、軽い失敗と同列にできない。背景が何であれ、苦しんでいる人をさらに傷つける笑いは止めてよい。

自分より上の人の失敗は、比較を元に戻す

心理学では、他人の不運から得る喜びをシャーデンフロイデと呼ぶ。Boeckerらは、羨望、喜び、同情、シャーデンフロイデを同じ枠組みで調べる九つの実験を行った。参加者は合計1,827人だった。[2]

その結果、自分より上にいる相手との比較は、横並びの相手との比較より、羨望とシャーデンフロイデを強めた。ただし、比べる分野が自分に関係しないときや、自分側に比較の基準がないときは、その効果が弱まった。

仕事で評価を競う相手の失敗には反応するのに、知らない競技の達人の失敗には何も感じない。この違いは、性格が場面ごとに変わったのではなく、自分に関係する比較が動いたかで説明できる。

比較の向きも大切である。上に見えていた相手が下がると、自分との差が縮まったように感じる。それが快感になるのであって、失敗そのものがいつでも楽しいわけではない。相手が変われば、同じ人が心配する側へ回ることもある。

同研究では、羨望とシャーデンフロイデが強いほど、その後の向社会的な行動は少なかった。ただし実験場面の平均的な関係であり、一度笑った人が助けないと決まるわけではない。

人との比べ方と、普段の対人傾向は別々に見る必要があります。ビッグファイブ診断は、協調性や誠実性を含む五つの傾向から、自分の対人スタイルを振り返る入口になります。

自分の五つの性格を測る(無料)

低い自己評価ではなく「脅かされた感覚」を見る

van Dijkらは二つの研究で、高い業績を上げた人を見たときの自己評価と、その人の不運への反応を調べた。自尊感情が低い人ほどシャーデンフロイデが強いという関係は、高業績者によって自分の価値が脅かされた感覚が仲立ちしていた。[3]

さらに、自分の大切な価値を確認する機会があると、この間接的な関係は弱まった。人の失敗が楽しく見えるとき、相手への悪意だけでなく、自分が失いかけた評価を取り戻す動きが含まれることがある。

これは「自尊感情が低い人は人を笑う」という決めつけではない。特定の高業績者を見せた実験であり、日常すべてを説明しない。注目したいのは、固定した性格よりも、その場で何に脅かされていたかである。

Big Fiveは一度の笑いを診断できない

CryselとWebsterは、シャーデンフロイデを測る12項目の尺度を五つの研究で検証し、比較的軽い笑いと、悪意を伴う喜びの二つを分けた。261人を調べた研究では、総合得点はBig Fiveの協調性・誠実性と負の相関、神経症傾向と正の相関を示した。著者らが実質的な支持とした基準を超えたBig Fiveは、協調性と誠実性だった。[1]

しかし、軽い笑いの側では同じ関係が強く出ていない。米国のオンライン標本を中心とした自己申告で、政治家の失態も題材に含む。集団の相関を、目の前の一人へそのまま当てはめることはできない。

さらに、失態のニュースを広める行動に関係したのは、その人の固定的な傾向より、その場で感じた喜びだった。性格は背景の一つだが、相手との関係、失敗の重さ、比較、笑ったあとの行動まで見なければ意味は分からない。

だから、診断結果を見て「協調性が低いから笑った」と逆算する使い方もしない。性格検査が示すのは普段の傾向であり、個別の行動には、その日の余裕、集団の空気、相手との履歴が重なる。

笑われたとき、笑ってしまったとき

誰かが笑われた場面では、笑う人を言い負かすより、まず本人を助ける。「大丈夫?」「手伝おうか」と声をかけ、「では次へ進もう」と場を切り替える。深刻な被害を笑う、同じ人を何度も笑いものにする行為が続くなら、距離を取り、職場や学校の相談先を使ってよい。

強く注意すると場が荒れそうなら、「今は助けよう」「それは広めないでおこう」と、人格ではなく目の前の行動へ短く線を引く。笑われた本人が平気そうに見えても、あとで一対一で確かめる余地は残しておきたい。

自分が笑ってしまったなら、次の四つを振り返る。

比較:誰の、何と自分を比べていたか。

報い:相手の失敗を「当然だ」と感じたか。

繰り返し:特定の人や弱い立場の人を何度も笑っていないか。

その後:相手が立て直すのを助けたか。

思わず笑った一回だけで、自分を悪人と決めなくてよい。一方で、笑ったあとに助けず、相手の失敗を広め、同じことを繰り返すなら見直す余地がある。感情の一瞬より、その後に選んだ行動のほうが変えやすい。

人の失敗を笑う背景は一つではない。軽いおかしさ、比較で揺れた自己評価、因果応報の感覚を分けると、人格を決めつけずに、止めるべき行動と立て直せる場面を見分けやすくなる。

対人傾向を、五つの性格から振り返る

ビッグファイブ診断では、協調性や誠実性を含む五つの性格傾向を確認できます。シャーデンフロイデや人格を判定する検査ではありません。一場面を決めつけず、普段の傾向を考える材料として使ってください。

無料登録不要120問版あり
ビッグファイブ診断を始める

参考にした研究

  • Crysel LC, Webster GD(2018)Schadenfreude and the spread of political misfortune. PLOS ONE, 13(9), e0201754. PLOS ONE
  • Boecker L, Loschelder DD, Topolinski S(2022)How individuals react emotionally to others' (mis)fortunes: A social comparison framework. Journal of Personality and Social Psychology, 123(1), 55–83. PubMed
  • van Dijk WW, van Koningsbruggen GM, Ouwerkerk JW, Wesseling YM(2011)Self-esteem, self-affirmation, and schadenfreude. Emotion, 11(6), 1445–1449. PubMed