「通じない」には三つの中身がある

冗談が通じなかったとき、言った側から見える結果は同じである。相手が笑わない、真顔で聞き返す、あるいは本気で反論する。しかし相手の中で起きていることは、少なくとも三つに分かれる。

一つ目は、冗談だと気づかなかった場合だ。言い方が淡々としていた、内輪の前提を知らなかった、忙しくて文字どおりに受け取った。これは性格より、情報の不足やタイミングの問題に近い。

二つ目は、冗談だと分かったが、面白くなかった場合だ。笑いのツボは人によって違う。分かっていて笑わないことを、理解できないことと同じに扱うと、相手の感じ方を見誤る。

三つ目は、冗談の形をした攻撃に感じた場合だ。体型、失敗、出身などに触れる冗談は、言った側が軽いつもりでも、受け取った側には笑える距離がない。

笑わなかった事実ではなく、
「分からなかった」「面白くなかった」「不快だった」のどれかを見る。

笑いは「ずれ」が「大丈夫」に見えたときに生まれる

McGrawとWarrenは、笑いが起きる条件を「無害な違反」として説明した。ふつうの決まりや期待から外れた出来事が、同時に「大丈夫だ」とも受け取れるとき、人は面白さを感じるという考え方である。[1]

五つの実験では、道徳に反する小さな出来事が、条件によって嫌悪感だけでなく笑いも引き起こした。違反を「大丈夫」に変える条件として調べられたのは、別の見方で許される場合、その決まりへのこだわりが弱い場合、出来事との心理的な距離がある場合の三つである。違反を「悪いが悪くない」と同時に見ることが、笑う反応を仲立ちしていた。

この見方に立つと、冗談が通じないことの一部は説明しやすい。同じ冗談でも、その話題を大切にしている人や、自分に近い出来事として受け取った人には、違反が「大丈夫」に見えにくい。面白さを感じる力がないのではなく、その冗談が笑える位置になかった可能性がある。

WarrenとMcGrawは後の研究で、娯楽、商品、人とのやり取りを題材にした六つの研究を行い、「意外さ」だけよりも「無害な違反」のほうが、面白いものとそうでないものをよく見分けたと報告した。[2]ただし、これらは主に用意した題材への評価を調べた研究で、実際の職場や家族の会話を長く追ったものではない。

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笑われることへの恐れが、冗談を攻撃に変える

冗談を悪い意味に受け取りやすい背景として研究されてきたのが、笑われることへの恐れ(ゲロトフォビア)である。周りの笑い声を、自分が笑いものにされている合図として受け取りやすい傾向を指す。

RuchとProyerは、臨床群と一般の参加者を合わせた863人を調べた。笑われることを強く恐れる人は、恥の感情が強い別の不調のある人、恥とは関係の薄い不調のある人、一般の人と、ある程度見分けることができた。予測と実際の群の一致は約69%だった。笑われることへの恐れは大人の間で大きく差があり、ある種の「ユーモアのなさ」を理解する鍵になるかもしれない、と著者らはまとめている。[3]

ここで大切なのは、原因の向きである。からかわれてつらい経験を重ねた人が、軽い冗談にも身構えるようになることは想像しやすい。その場合、真に受ける反応は「融通が利かない」性格の表れではなく、これ以上傷つかないための防御かもしれない。

ただし、この研究は質問紙で群を見分けたもので、日常の会話で冗談を誤解する回数を直接測ってはいない。また、冗談を笑わない人の多くは、強い恐れとは関係なく、単に面白くないだけである。一人の反応をこの概念に当てはめて診断することはできない。

Big Fiveから一回の反応を決めつけない

「冗談が通じないのは協調性が低いからだ」「真面目すぎるから誠実性が高いのだろう」と考えたくなる。しかし、冗談を真に受ける行動と特定の因子を直接結んだ研究は、ここで紹介した範囲には含まれていない。

感受性(神経症傾向)が高い人は、否定的な評価に敏感になりやすいとされる。それでも、一度笑わなかったことから感受性の高さを逆算はできない。同じ人でも、疲れているとき、相手との関係が浅いとき、話題が自分に近いときには、冗談の受け取り方が変わる。

Big Fiveが示すのは、さまざまな場面を通して続く平均的な傾向である。冗談への反応は、話題、言い方、相手との距離、その日の余裕が重なった一場面にすぎない。

冗談がすれ違ったときの対処

言った側は、まず「伝わらなかった」を「相手の欠点」にしないことだ。気まずさを埋めようと同じ冗談を重ねたり、「冗談だよ、真に受けないで」と押し返したりすると、相手の受け取り方を否定する形になる。

気づかなかったようなら:「今のは冗談のつもりだった」と短く補い、それ以上は説明しない。

面白くなかったようなら:笑いを求めず、話を先へ進める。

不快だったようなら:「嫌な言い方だった、ごめん」と先に謝り、同じ話題の冗談をやめる。

言われた側で、「冗談が通じない」と言われて困っているなら、その場で笑う必要はない。「冗談なのか本気なのか、分からなかった」と確認するだけでよい。確認は、会話を止めることではなく、同じすれ違いを減らす手段である。

からかいの冗談がくり返され、断っても続くなら、それはユーモアの受け取り方の問題ではない。信頼できる人や相談窓口に話すことを優先してほしい。

冗談が通じるかどうかは、その人だけの性格ではなく、言葉と関係の間で決まる。笑わなかった理由を一つに決めつけず、確かめ合える関係のほうを大切にしたい。

冗談への反応を、性格の答えにしない

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参考にした研究

  • McGraw AP, Warren C(2010)Benign violations: Making immoral behavior funny. Psychological Science, 21(8), 1141–1149. DOI
  • Warren C, McGraw AP(2016)Differentiating what is humorous from what is not. Journal of Personality and Social Psychology, 110(3), 407–430. DOI
  • Ruch W, Proyer RT(2008)The fear of being laughed at: Individual and group differences in gelotophobia. Humor: International Journal of Humor Research, 21(1). DOI