「自分の意見がない人」と言われる、よくある場面

お昼に何を食べるか聞かれて、「なんでもいいよ」と答える。会議で「どう思う?」と振られて、「みなさんと同じです」と返す。休日の行き先も、買う服も、気づけばいつも人に決めてもらっている。悪いことをしているわけではないのに、「自分の意見がない人だね」と言われて、少し傷ついた経験のある人もいるでしょう。

自分の意見がない人の特徴としてよく挙がるのは、周りに合わせる、どちらでもいいと答える、聞かれても考えがまとまらない、反対意見を言わないといったものです。争いを起こさない穏やかな人と見られる一方で、「何を考えているか分からない」「頼りない」と受け取られることもあります。

人前で話す場面が苦手な人は会議で発言できない人の心理で、決めるまでに迷い続ける人は優柔不断で決断できない人に共通する性格で取り上げました。この記事では、考えがあっても出さない人と、そもそも自分の考えがつかみにくい人の両方に目を向けて、その心の中を考えます。

自分の意見がない人の多くは、何も考えていないわけではない。
考えをつかみにくいか、出さないほうが安全だと感じているのだ。

一つの印象で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、人との関わり方や気持ちの動き方を振り返れます。

自分の五つの性格を測る(無料)

周りに合わせるのは、だれにでもある心の動き

周りの人の答えに自分の答えを合わせてしまう心の動きは、心理学では「同調」と呼ばれ、古くから研究されてきました。有名なのは、線の長さを比べるという、答えがはっきりした課題でも、周りの全員が同じ間違いを言うと、それに合わせてしまう人が出るという実験です。

BondとSmithは、この種類の実験133件をまとめて分析しました。その結果、アメリカでは1950年代から同調が減ってきていること、そして個人より集団の和を大切にする文化の国ほど、同調が多い傾向があることが分かりました。[1]

つまり、周りに合わせる気持ちは、一部の弱い人だけが持つものではなく、だれにでもあり、育った場や文化によって強くも弱くもなるものです。和を大切にする場で長く過ごしてきた人ほど、意見を合わせることが自然な振る舞いになっていても不思議ではありません。

「自分がない」と感じるときの心の中

考えを出さないのではなく、自分が何を望んでいるのか自分でも分からない、という人もいます。Campbellたちは、「自分はこういう人間だ」という自分像が、どれだけはっきりしていて、一貫していて、時間がたっても変わらないかを「自己概念の明確さ」と呼び、測る尺度を作りました。[2]

その研究では、自分像がはっきりしない人ほど、神経症傾向が高く、自尊心が低く、自分の内面の状態に気づきにくく、くよくよと考え込みやすいという関係が見られました。また、日本の参加者は、カナダの参加者よりも自分像のはっきりさが低めだったことも報告されています。

自分の気持ちがつかみにくいと、意見を聞かれても答えが出てきません。そのため、ひとまず相手に合わせる、という形になりやすいのです。不安を感じやすい傾向についてはビッグファイブ理論とはでも説明しています。

黙っている理由は、一つではない

1. あきらめの沈黙:言っても変わらないと思い、意見を出すのをやめている。

2. 身を守る沈黙:反対されたり、嫌われたりするのが怖くて、意見を出さない。

3. 思いやりの沈黙:相手やその場の和を大切にして、あえて自分の意見を控える。

Van Dyneたちは、職場で意見を出さない「沈黙」を、理由ごとに三つに分けて考える枠組みを示しました。[3]同じ「黙っている」でも、あきらめ、恐れ、思いやりでは、心の中がまったく違います。

さらに研究者たちは、沈黙は発言よりもあいまいで、周りの人は黙っている理由を取り違えやすいと指摘しています。思いやりで控えている人が「意見がない人」と見られたり、言っても無駄だとあきらめている人が「協力的な人」と見られたりするのです。嫌われたくない気持ちが強い場合は八方美人な人の心理も、頼まれごとを断れずに抱えてしまう場合は断れない性格を直したい人へも参考になります。

自分の意見がない人との付き合い方、自分がそうなら

周りに自分の意見がない人がいるときは、「どう思う?」と大きく聞くより、選べる形で聞くのがこつです。「和食と中華なら、どっちの気分?」「この案とこの案なら、気になるのはどっち?」と、答えやすい形にすると、小さな好みが出てきやすくなります。出てきた意見を否定せずに受け止めると、次も話しやすくなります。

反対に、自分が「意見がない」と言われたことがある人は、大きな意見ではなく、小さな好みから口に出すことから始めてみてください。「どちらかと言えばこっちかな」「今日は温かいものがいい」程度で十分です。考えがまとまらないときは、「少し考えてから伝えるね」と時間をもらうのも立派な意見の出し方です。

また、自分がどの沈黙をしているのかに気づくことも役に立ちます。思いやりで控えているなら、それはあなたの良さです。ただ、怖くて言えない状態が続いているなら、信頼できる人との一対一の場など、安心できるところから少しずつ考えを出す練習をしてみましょう。人の意見を聞き入れにくい、反対側の性格については頑固な人の心理で取り上げています。

「自分の意見がない人」と決めつけない

意見を出すかどうかは、性格だけでなく、その場の雰囲気や立場、相手との関係にも大きく左右されます。ある場では黙っている人が、別の場ではしっかり自分の考えを話していることもよくあります。一つの場面だけで、その人を判断しないようにしましょう。

一方で、何を選んでも自分の気持ちが分からない、何をしても空っぽに感じるといった状態が長く続き、つらさが強いときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話してみてください。

自分の意見がない人の多くは、考えがないのではなく、考えをつかみにくいか、出しにくい場にいるのです。その違いを知っておくと、周りの人も本人も、もう少し気楽に意見を交わせるようになります。

印象ひとつで、人柄を決めない

ビッグファイブ診断は、協調性や神経症傾向を含む五つの傾向を振り返る道具です。だれかが自分の意見がない人かどうかを判定する検査ではありません。

無料登録不要120問版あり

自分の意見がない人と、どうしても合わないと感じるなら。まず自分の性格を診断し、そのあと「あの人診断」で相手の様子を答えると、ふたりの性格のどこがぶつかりやすいのか、どう付き合えば楽になるかが分かります。

なぜあの人と合わないのかを知る(無料・登録不要)

参考にした研究

  • Bond R, Smith PB(1996)Culture and conformity: A meta-analysis of studies using Asch's (1952b, 1956) line judgment task. Psychological Bulletin, 119(1), 111–137. DOI
  • Campbell JD, Trapnell PD, Heine SJ, Katz IM, Lavallee LF, Lehman DR(1996)Self-concept clarity: Measurement, personality correlates, and cultural boundaries. Journal of Personality and Social Psychology, 70(1), 141–156. DOI
  • Van Dyne L, Ang S, Botero IC(2003)Conceptualizing employee silence and employee voice as multidimensional constructs. Journal of Management Studies, 40(6), 1359–1392. DOI