素直な人とは、どんな人?
助言を聞いて「なるほど」と言える、分からないことを質問できる、間違いに気づいたらやり方を変えられる。日常で「素直な人」と呼ばれる姿には、いくつかの意味が混ざっています。感情をまっすぐ表すことと、人の意見から学ぶことも、同じではありません。
褒め言葉を喜べないときや、プライドから意見を受け入れにくいときの話とは分けて、ここでは人の話から学ぶ姿勢を扱います。
この記事では、相手の話をいったん受け止め、理由を確かめて自分の考えを見直せることに注目します。すぐに同意する回数や、言われたとおりに動く速さだけで、素直さを決める必要はありません。
「自分には何が合うか」を考えず周囲に合わせて苦しくなるなら、自分の意見がないと感じる状態も分けて考えてみましょう。素直であろうとするために、自分の希望まで消さなくて大丈夫です。
そのうえで、自分で考える。
人の意見を聞くとき、自分にはどんな傾向がある?ビッグファイブ診断では、協調性や開放性など五つの性格傾向を振り返れます。素直さの合否を決める検査ではありません。
自分の五つの性格を測る(無料)「自分も間違うかもしれない」という姿勢
心理学には、自分の信念や知識が間違っている可能性を認める「知的謙虚さ」という考え方があります。これは、日本語の「素直」とまったく同じ意味ではありませんが、人の話から学ぶ姿勢を考える手がかりになります。
Learyたちの四つの研究では、知的謙虚さは好奇心や新しい考えへの開かれた姿勢などと関連していました。また、知的謙虚さが高い人は、説得する文章の論拠の強さに、より敏感だったと報告されています。[1]
つまり、何でも信じることとは区別できます。「私の見方にも抜けがあるかもしれない」と考えつつ、相手の説明にも根拠を求める姿勢です。ここから、素直な人は必ず賢い、仕事ができる、とまで結論づけることはできません。
たとえば、いつもの作り方を変えるよう勧められたとき。「前からこうしているので」と終わらせず、「変えると何が良くなるの?」と聞く。納得できる理由があれば試し、合わなければ別の方法を探す。受け入れるか断るかの前に、理解する時間を挟めます。
協調性や開放性が高いと素直なの?
ビッグファイブの協調性は、他者への配慮や協力に関わります。開放性は、新しい考えや経験への関心に関わります。ただし、どちらかの点数をそのまま「素直さの点数」と呼ぶことはできません。
人と穏やかに接していても、内心では納得していないことがあります。反対に、率直な質問をする人が、説明を聞いて考えを変える場合もあります。口調の柔らかさと、考えを更新できるかは、分けて見ると分かりやすくなります。
PorterとSchumannの研究では、知的謙虚さが高い人ほど、意見の対立場面で相手の考えを知ろうとする傾向が見られました。政治的な意見を扱った研究でも、反対側の見方に触れる割合が高いという結果でした。[2]
これは「相手に賛成した」という意味ではありません。違う意見を知ることと、その意見を採用することは別です。性格診断も、人を素直か頑固かに二分するためではなく、自分が聞きやすい場面・身構えやすい場面を振り返る材料として使ってみてください。
助言は、全部受け入れなくてよい
「素直な人は伸びる」と言われると、助言に従わない自分が悪いように感じるかもしれません。しかし、助言や評価の伝え方によって、結果は変わります。
KlugerとDeNisiが仕事や課題の成績に関するフィードバック研究をまとめたところ、平均では成績を改善する一方、三分の一を超える介入では成績が低下していました。課題から離れ、自分自身への注意を強めるような場合には、効果が小さくなる傾向も示されています。[3]
この研究は、日常のあらゆる助言を調べたものでも、受け手の素直さを判定したものでもありません。それでも、うまくいかない理由を、受け手の性格だけに押しつけないための材料になります。
「あなたはだめだ」という評価と、「ここを短くすると伝わりやすい」という具体的な情報は分けて受け取りましょう。前者を自分の価値として抱え込む必要はありません。何を変えればよいのか分からなければ、具体例を一つ聞くところから始められます。
素直に聞くための三つの工夫
ここからは、研究が直接効果を確かめた訓練ではなく、日常で取り入れやすくするための提案です。急に性格を変えるより、会話の一部分だけを変えてみましょう。
一つ目は、理解した内容を確かめること。「つまり、この順番を変えるとよいということ?」と短く返します。納得したふりをせず、何を言われたのかをそろえます。
二つ目は、小さく試すこと。やり方を全部入れ替える前に、一つの作業で試します。うまくいった点と合わなかった点を見てから、続けるかを決めます。
三つ目は、考えが変わった理由を伝えること。「この説明を聞いて、その方法のほうがよいと思った」と言葉にします。前の意見を隠すより、何を学んだかを共有できます。
すぐに返事ができなくても構いません。「少し考えてから返事をしたい」も、話を大切に扱う方法です。言われた直後に悔しくなったとしても、落ち着いてから内容を確かめれば、学ぶ機会は残っています。
素直さと、自分を守ることは両立する
断ったとたんに「素直じゃない」と責められる場合は、相手が何を求めているかも見直しましょう。無理な頼みや、自分の大切な条件に反する話まで引き受ける必要はありません。断れないときの対処も参考になります。
一方で、自分の意見を守ろうとして話を閉じてしまうなら、プライドの高さが出る場面を振り返ってみてください。誰にでも、気持ちや経験が強く結びついた話題はあります。一度の反応で、自分の性格全体を決めつけなくて大丈夫です。
聞くこと、確かめること、選ぶこと。この三つを自分で行えるなら、意見が違っても会話は続けられます。「いつでもはいと言える人」より、「必要なときに学び直せる人」を目指してみませんか。
協調性や開放性を含む五つの性格傾向から、人との向き合い方を振り返ってみましょう。
ビッグファイブ診断を受ける(無料)参考文献
- Leary, M. R., et al. (2017). Cognitive and Interpersonal Features of Intellectual Humility. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(6), 793–813. PubMed(論文要旨)
- Porter, T., & Schumann, K. (2018). Intellectual humility and openness to the opposing view. Self and Identity, 17(2), 139–162. 論文(DOI)
- Kluger, A. N., & DeNisi, A. (1996). The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin, 119(2), 254–284. 論文(DOI)