「合わない」は感覚ではなく因子の差
「彼氏(彼女)と性格が合わない」という感覚は、なんとなく漠然としていることが多い。何かが違う、話していると疲れる、価値観が違う、でも具体的にどこが違うのかはうまく言えない。そういう状態で「合わない」とだけ感じている人は多いと思う。
ビッグファイブ心理学の視点から言うと、性格の「合う・合わない」は5つの因子それぞれの組み合わせの問題だ。外向性・誠実性・協調性・開放性・神経症性(感受性の強さ)。この5つのどれがどのくらい違うかによって、摩擦の種類と深刻さが変わる。
重要なのは、「5つ全部が似ていることが良いカップル」でも「全部違うから合わない」でもないという点だ。研究では、類似性よりも補完性の方が長続きするカップルに見られる組み合わせもある。ただし、ある特定の因子については差が大きいほど摩擦が起きやすいということも、データとして出ている。
まず自分が「合わない」と感じているのは何の場面かを整理すると、どの因子の差が問題になっているかが見えてくる。休日の過ごし方が違う、お金の使い方が違う、感情の表現の仕方が違う、話すスピードや内容が違う。こういった具体的な違和感は、ほとんどの場合、特定の因子の差に紐づいている。
摩擦を生みやすい因子の組み合わせ
神経症性の差。これが一番摩擦になりやすい。神経症性(感受性の強さ・不安になりやすさ)が高い人と低い人がカップルになると、感情の温度差が大きくなる。高い側は、些細なことで傷ついたり、関係の変化に敏感だったり、相手の言葉や態度が気になって頭から離れなかったりする。低い側は、それを「気にしすぎ」「考えすぎ」と感じる。高い側からすると「無神経」「冷たい」と映る。お互いに悪意はないが、処理している感情の量と密度が根本的に違う。
カップルの関係満足度を予測する研究(Karney & Bradbury, 1995年のメタ分析を含む多数の研究)では、神経症性の高さはパートナーの満足度の低下と最も強く関連する因子の一つとして繰り返し示されている。本人の神経症性が高くても、パートナーが誠実性・協調性ともに高ければある程度カバーされるが、それ以外の組み合わせでは摩擦が生じやすい。
誠実性(几帳面さ・計画性)の差。部屋の片付けかた、お金の使い方、約束を守る意識。これらは誠実性のスコアに強く関連している。誠実性が高い人は計画・整理・約束の履行を重視し、低い人は柔軟・臨機応変・その場の流れを重視する。どちらが「正しい」ということはないが、一緒に生活をしていくと日常的に衝突しやすい因子だ。特に同棲・結婚に踏み込んだとき、誠実性の差は「性格が合わない」の主要因になる。
外向性の差。休日の過ごし方、友人との関係、人付き合いの頻度に直接影響する。外向性が高い側は「友達ともっと会いたい」「休日は外に出たい」「パーティーや集まりが楽しい」と感じる。低い側は「二人でいたい」「静かにゆっくり過ごしたい」「人付き合いで疲れた後に一人になる時間が必要」と感じる。これは価値観の問題というより、神経系の問題だ。
外向性の差があるカップルは、「どちらかが無理をする」という構造になりやすい。外向型が内向型に合わせると「物足りない・退屈」になる。内向型が外向型に合わせると「消耗・ストレス」になる。差の大きさと、お互いがその差をどこまで許容できるかが持続性を左右する。
開放性(新しいことへの興味)の差。趣味・旅行・新しい挑戦への意欲が違うとき、これが原因になっていることが多い。「新しいことを試したい」「いつもと違う場所に行きたい」という欲求の強い人と、「安定した日常が心地よい」「慣れた場所・人・ルーティンが好き」という人との差だ。デートの企画をめぐって、変化を求める側が不満を感じ、安定を好む側は「何が不満なのかわからない」という状況が起きやすい。
協調性の差。相手への気遣い、衝突を避けるか向き合うか、「NO」と言えるかどうかに関係する。協調性が高い側は相手の感情を優先しすぎて自分を犠牲にしやすく、低い側は率直に意見を言う一方で相手が傷ついたことに気づきにくい。組み合わせによっては補完関係になるが、極端に差があると「空気を読めない」「主体性がなく決断をしてくれない」という摩擦になりやすい。
この記事の話は、ビッグファイブでいう「外向性」と関わりがあります。自分の外向性がどのくらいかは、5分で測れます。
自分の外向性を測る(無料・登録不要)解消できる合わなさ・根本的な合わなさ
「合わない」と感じている原因が分かったとして、それが解消できるものかどうかは、また別の問題だ。
解消しやすいのは、スキルと習慣の差から来る合わなさだ。コミュニケーションの取り方、感情の伝え方、相手の話の聞き方。これらは、お互いに「変えたい」という意思があれば変えられる。たとえば「不満を溜め込んで爆発する」というパターンは、性格の問題というより習慣の問題で、気づいて練習すれば変えられる。
解消しにくいのは、価値観と特性の根幹から来る合わなさだ。お金に対する感覚、家族や将来に対する考え方、仕事と生活のバランスをどう見るか。これらは深く根ざしており、相手が「変わろう」と思っても大きくは変わらない。また、神経症性や外向性の差は生物学的な傾向と絡んでいるため、「努力で埋めよう」とすることには限界がある。
もう一つ、注意が必要なのが「慣れによる麻痺」だ。付き合いが長くなると、最初は「この人はこういう人だから」と合わせていたことが、気づかないうちに自分を消耗させ続けているというパターンがある。相手が変わったのではなく、自分が慣れて我慢し続けている状態だ。「合わない」という感覚が今更出てきたのではなく、蓄積してきたサインが表面に出てきているケースは多い。
「合わない」をどう扱うか
「合わない」という感覚は、別れるか続けるかの二択ではないと思う。合わなさの種類と深刻さを正確に把握してから、何ができるかを考える方が現実的だ。
摩擦の原因が「行動の習慣」なら、話し合うことで変わる余地がある。「誠実性の差から来るお金の使い方の違い」なら、ルールを作れば共存できる。「外向性の差から来る休日の過ごし方」なら、別々に過ごす時間を取り入れることで解消する人も多い。相手が「変わってくれない」と思っていたことが、実は「変え方を知らなかっただけ」ということもある。
一方、感情の処理の仕方(神経症性)の大きな差、お金・子供・仕事に関する価値観の根本的なずれは、「頑張ればなんとかなる」とはなりにくい。そこを「愛があれば乗り越えられる」で押し通すと、愛情は残っていても疲弊して関係が壊れるというパターンになりがちだ。
一番もったいないのは、「合わない理由」を感覚のまま言語化せずに放置することだと思う。「なんかつらい」のに何が問題かがわからないと、解決の糸口も見えないし、相手に伝えることもできない。合わなさを言語化することは、問題を解決するためでもあるし、「これはどうにもならない」という判断をするためにも必要だ。
相手の性格を診断で理解する
ビッグファイブ診断には、相手の行動を観察しながら「あの人の性格」を推測できる「あの人診断」という機能がある。自分が回答するのではなく、「あの人ならどう答えるか」を想像しながら回答することで、相手のビッグファイブプロファイルを推測できる。
もちろんこれは推測であって、相手が自分で回答した結果とは違う。しかし「相手の行動パターンを5因子で整理する」という作業自体に意味がある。「なんとなく合わない」を「外向性の差が大きく、神経症性も双方高いため、感情の処理量の差が問題になっている」という言葉に変換できると、次の対話の質が変わる。
また、自分自身の診断を受けることで、「自分の側から何が求めすぎかもしれないのか」が見えることもある。神経症性が非常に高い自覚がある人は、相手の「合わなさ」の一部が自分の感受性の強さから来ている可能性を考えてみる余地がある。逆に、「自分の要求は正当だが、相手の誠実性が低すぎる」と判断できるケースもある。どちらにしても、診断は「何が起きているか」を冷静に見るためのツールとして機能する。