「気が強い人」と言われる、よくある場面

会議で相手の意見にはっきり反対する。理不尽だと思えば、上司にも引かずに言い返す。話し合いで「それは違うと思います」と、ためらわず口にする。こうした人は、周りから「気が強い人」と呼ばれます。

気が強い人の特徴としてよく挙がるのは、自分の意見をはっきり言う、押されても引かない、言いにくいことも先に口にするといったものです。頼もしく見える日もあれば、「言い方がきつい」と感じられる日もあります。

すぐ感情的になる場合は怒りやすい性格の科学で、意見を変えない場合は頑固な人の心理で取り上げました。この記事では、怒っているわけでも意地を張っているわけでもなく、自分の主張を押し出す強さに注目して、気が強い人の心の中を考えます。

気が強いのは、性格が悪いからとは限らない。
「どこまで押すと、どうなるか」の予想が、人によって違っている。

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気の強さは「押し方の予想」にも左右される

心理学では、気が強いことに近い行動を対人的な主張性(アサーティブネス)と呼びます。意見の対立や交渉の場面で、自分の立場をどれだけ強く言い張るかという度合いです。

Amesは、強く押す人と控えめな人の違いを、「押したらどんな結果になるか」という予想(アサーティブネス期待)から説明しました。多くの人は、押す強さを上げるほど関係も成果もよくなるが、ある点を超えると逆に悪くなると考えています。ところが、そのちょうどよい点がどこにあるかは、人によって大きく違いました。[1]

しかも、この予想の違いは、相手や同僚が見た実際の主張の強さと結びついていました。人間関係を大切にする気持ちなど、価値観の違いを考慮しても結びつきは残りました。[1]つまり、気が強い人は関係を気にしないのではなく、「ここまで言っても大丈夫」という見積もりが高い可能性があります。

強すぎても弱すぎても、評価は下がる

AmesとFlynnは、職場のリーダーについて、主張の強さと評価の関係を調べました。その結果、主張が非常に弱い人も、強い人も、リーダーとして効果が低いと見られやすいことが示されました。弱すぎると目標の達成が進みにくく、強すぎると人間関係が悪くなる、という損得が両側にあるためです。[2]

この研究は、気が強いこと自体を悪いとはしていません。ちょうどよい強さがある、という見方です。はっきり言えることは、遠慮して何も言えないよりも、仕事や人間関係で助けになる場面があります。

ビッグファイブで見ると、人前で自分の意見を押し出す傾向は、外向性の中の「自己主張」の側面と重なります。また、協調性が低めの人は、相手に合わせるより自分の意見を通すことを選びやすくなります。ただし、これらの性格だけで気の強さが決まるわけではありません。育った家庭、職場の雰囲気、過去にうまく伝わった経験も関わります。

本人には、自分の強さが見えにくい

1. 自分を適切だと思っている:周りから強すぎる、または弱すぎると見られている人も、自分では適切だと感じていることが多くあります。

2. 言い過ぎたと思い込む:実際には適切な強さで話していた人が、相手の反応を見て「言い過ぎた」と感じることがあります。

3. 相手が不快さを見せることもある:相手があえて気分を害した様子を見せることがあり、それが影響しています。

AmesとWazlawekは、交渉の実験で、相手から見た主張の強さと、本人の自己評価を比べました。強すぎる・弱すぎると見られた人も、自分では「ちょうどよい」と思っていたことが多く、反対に、ちょうどよいと見られた人の多くは、「強く出すぎた」と思い込んでいました。研究者はこれを「ライン越え錯覚」と名づけています。[3]

この結果は、気が強いと言われる人も、そう言われて落ち込む人も、自分の感覚だけでは強さを測りにくいことを示しています。「気が強いと言われた」ことが、すぐ「自分は言い過ぎだ」と決める理由にはなりません。

気が強い人との付き合い方、自分が気が強い場合

気が強い相手と付き合うときは、強い言い方と、本心の敵意を分けて受け取るのが有効です。言葉の強さは、「押しても大丈夫」という見積もりの表れで、攻撃のつもりではないことが多くあります。意見が違うときは、「どこが一番ひっかかりますか」と具体的に聞くと、争いにならずに話が進みます。

自分が気が強いと言われる人は、次の二つを試してみてください。一つは、結論の前に、相手の考えを一言で確認すること。「〇〇ということですね。そのうえで私は…」と言うだけで、押しの強さが和らぎます。もう一つは、信頼できる人に「いまの言い方、どう聞こえた?」と聞いてみることです。研究が示すように、自分の強さは自分では見えにくいので、他人の目を借りるのが確実です。

反対に、「気が強い人」と言われるのを避けて黙りがちな人も、同じ工夫が役立ちます。主張が弱すぎる状態も評価を下げやすいので、無理に自分を抑え込むより、言い方を整えて伝えるほうが、関係も成果も守れます。

「気が強い人」と決めつけない

気が強いという印象は、その場の状況や相手との力関係によって大きく変わります。同じ人が、親しい友人の前では穏やかで、仕事の場でははっきり話すことも珍しくありません。一つの場面だけで、その人の性格を決めないようにしましょう。

強い言葉で人格を否定される、恐怖を感じるなど、人間関係に深い負担があるときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話してみてください。

気の強さの多くは、悪意ではなく、押し方の予想と、自分では見えない強さのずれです。そう知っているだけで、相手の言葉を受け止める余裕が少し生まれます。

印象ひとつで、人柄を決めない

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参考にした研究

  • Ames DR(2008)Assertiveness expectancies: How hard people push depends on the consequences they predict. Journal of Personality and Social Psychology, 95(6), 1541–1557. DOI
  • Ames DR, Flynn FJ(2007)What breaks a leader: The curvilinear relation between assertiveness and leadership. Journal of Personality and Social Psychology, 92(2), 307–324. DOI
  • Ames DR, Wazlawek AS(2014)Pushing in the dark: Causes and consequences of limited self-awareness for interpersonal assertiveness. Personality and Social Psychology Bulletin, 40(6), 775–790. DOI