「口が悪い人」と言われる、よくある場面
頑張って作った資料を見せたら、「これ、分かりにくいね」とひと言で返される。料理を出すと「味が薄い」とだけ言われる。冗談のつもりなのか、「相変わらず遅いな」と笑いながら言う。言った本人はすぐに忘れていても、言われた側はあとまで引きずってしまいます。こうした人は、周りから「口が悪い人」と呼ばれます。
口が悪い人の特徴としてよく挙がるのは、言い方がきつい、遠回しに言わない、乱暴な言葉や強い言葉を使いやすいといったものです。裏表がなく付き合いやすいと感じる人もいる一方で、言葉に傷ついて距離を置く人も少なくありません。
その場にいない人を悪く言う心理は悪口ばかり言う人の心理で、自分の主張をはっきり押し出す人は気が強い人の心理で取り上げました。この記事では、目の前の相手に向ける言葉づかいそのものがきつい人に注目して、その心の中を考えます。
自分の言葉が相手にどれだけ重く届くかを、軽く見積もっているのだ。
一つの印象で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、人との関わり方や気持ちの動き方を振り返れます。
自分の五つの性格を測る(無料)汚い言葉と性格の関係
Jayは、人が日常の中で使う汚い言葉やののしりの言葉について、これまでの研究をまとめました。その中で、こうした言葉をよく使う人は、外向性が高い人や、敵意を抱きやすい人に多く、反対に協調性や誠実性が高い人には少ないという関係が紹介されています。[1]
Jayはまた、汚い言葉が使われ続けている理由として、怒りやいら立ちといった気持ちを、ふつうの言葉よりもすばやく伝えられる点を挙げています。口の悪さは、ただの乱暴さではなく、気持ちを手っ取り早く外に出す手段にもなっているのです。
つまり口が悪い人には、思ったことをすぐ口に出す人づきあいの勢いと、相手に合わせるより自分の感じ方を優先しやすい傾向が重なっていることがあります。協調性が低い人の特徴も、あわせて参考にしてください。
「正直に言っているだけ」の落とし穴
1. 伝える中身:「この資料は分かりにくい」「もう少し早く終わらせてほしい」という、相手に伝えたい事実や要望。
2. 伝える言い方:「センスがない」「遅すぎる」のように、相手そのものを否定するような言葉や口調。
口が悪い人は、よく「正直に言っているだけ」と言います。たしかに、正直に伝えること自体は悪いことではありません。LevineとCohenの研究では、人は正直に伝えたときの相手の反応を、実際よりも悪く見積もりすぎていることが分かりました。正直に話すことに気を配って過ごした人は、思っていたよりも楽しく、人とのつながりを感じ、関係を傷つけることも少なかったのです。[2]
ここから分かるのは、正直さそのものは関係を壊しにくいということです。言われた側を傷つけているのは、多くの場合、正直な中身ではなく、相手を否定するような言い方のほうです。中身と言い方は切り分けられます。
きつい言い方は、言われた側の力を奪う
PorathとErezは、失礼な言い方が人にどんな影響を与えるかを、三つの実験で調べました。[3]
その結果、失礼な言葉を向けられた人は、決まった手順の作業でも、新しいアイデアを考える作業でも、成績が下がりました。目上の人から言われた場合だけでなく、関係のない第三者から言われた場合や、言われる場面を想像しただけでも、同じような影響が見られました。さらに、周りの人を手伝おうとする行動も減っていました。
研究者たちは、失礼な言葉によって頭の働きが乱されることが、成績が下がった原因だと考えています。「厳しく言ったほうが奮起する」と思ってきつい言葉を使っても、相手は言葉に気を取られて、かえって力を出せなくなるのです。
口が悪い人との付き合い方、自分が言われたら
口が悪い人と付き合うときは、言われた言葉を「中身」と「言い方」に分けて受け取ることが大切です。「分かりにくい」という中身に役立つ指摘があれば受け取り、きつい言い方の部分まで自分への評価として抱え込まないようにしましょう。
相手が悪気なく話している場合は、「その言い方だと、少しつらい」と短く伝えるだけで変わることもあります。責める言葉ではなく、自分の受け取り方として伝えるのがこつです。それでも言葉で傷つけられ続けるなら、話す場面を減らして距離をとることも、自分を守る大切な選択です。
反対に、自分が「口が悪い」と言われたことがある人は、伝える中身は変えずに、言い方だけを変えることから始めてみてください。「センスがない」ではなく「ここをこう変えると、もっと伝わりそう」と、事実と提案に置き換えます。いら立っているときほど言葉はきつくなりやすいので、ひと呼吸おいてから話すのも効果的です。気持ちの高ぶりやすさについてはすぐ怒る・感情的になりやすい性格の科学も、相手を評価する言い方については上から目線の人の心理も参考になります。
「口が悪い人」と決めつけない
言葉のきつさの感じ方は、育った環境や地域、その場の関係によっても大きく変わります。一度のきつい言葉だけで、その人のすべてを判断しないようにしましょう。
一方で、きつい言葉を毎日のように浴びて、眠れない、仕事や学校に行くのがつらいといった状態が続くときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話してみてください。
口の悪さの多くは、伝えたい中身ではなく、言い方から生まれる問題です。その違いを知っておくと、言われた側も言う側も、少し落ち着いて言葉と向き合えます。
印象ひとつで、人柄を決めない
ビッグファイブ診断は、協調性を含む五つの傾向を振り返る道具です。だれかが口の悪い人かどうかを判定する検査ではありません。
参考にした研究
- Jay T(2009)The utility and ubiquity of taboo words. Perspectives on Psychological Science, 4(2), 153–161. DOI
- Levine EE, Cohen TR(2018)You can handle the truth: Mispredicting the consequences of honest communication. Journal of Experimental Psychology: General, 147(9), 1400–1429. DOI
- Porath CL, Erez A(2007)Does rudeness really matter? The effects of rudeness on task performance and helpfulness. Academy of Management Journal, 50(5), 1181–1197. DOI