「真似する人」に気づく、よくある場面
先週買ったばかりのバッグと、同じものを持ってくる。髪型を変えたら、少しして相手も同じ髪型になっている。会議で話した案を、別の場で自分の言葉のように話している。こうした人は、周りから「真似する人」と呼ばれます。
真似する人の特徴としてよく挙がるのは、持ち物や服装が似てくる、口ぐせや話し方がうつる、好きなものを後から好きになるといったものです。最初は「趣味が合うのかな」と思っても、何度も続くと、もやもやした気持ちが残ります。
人より上に見せたい気持ちが強い場合はマウントを取る人の心理で、相手の成果を自分のものにする場合は手柄を横取りする人の心理で取り上げました。この記事では、持ち物や言動を何度もまねてくる人に注目して、その心の中を考えます。
「近づきたい」「仲間でいたい」という気持ちが、形を変えて表れることもある。
一つの印象で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、人との関わり方や物事の感じ方を振り返れます。
自分の五つの性格を測る(無料)人は、気づかないうちに相手をまねている
ChartrandとBarghは、初対面の相手と話す実験を行いました。相手が顔をこすっていると参加者も顔をこすり、足を揺らしていると参加者も足を揺らすことが多く、本人はまねていることにほとんど気づいていませんでした。研究者たちは、これを周りに合わせて色を変える動物になぞらえ「カメレオン効果」と呼びました。[1]
同じ研究では、相手にしぐさをまねられた人のほうが、相手に好感を持ち、会話がなめらかだったと感じていました。さらに、相手の立場に立って考えやすい人ほど、よくまねていたことも報告されています。
つまり、まねること自体は、人と仲良くなるときに自然に起きる動きです。口ぐせや話し方がうつるのは、相手との距離が縮まっている印の場合もあります。
居場所が不安なとき、真似は増えやすい
Lakinらは、実験の中でわざと仲間外れの体験をしてもらい、そのあとの行動を調べました。すると、仲間外れにされた人は、次に会った相手のしぐさを、そうでない人よりも多くまねていました。しかも、自分の仲間だと感じる相手を選んでまねていたのです。[2]
研究者たちは、まねることが「受け入れてほしい」という気持ちを満たす、手軽な方法になっている可能性を指摘しています。同じ服、同じ持ち物、同じ好きなものを選ぶ人の中には、相手と同じでいれば仲間でいられると、心のどこかで感じている人もいるでしょう。
人からどう見られるかが気になる人や、自分の好みにまだ自信が持てない人ほど、身近な人の選択を「正解」として取り入れやすいと考えられます。人の目が気になる性格も、あわせて参考にしてください。
うらやましさが「真似」に変わるとき
1. 前向きなうらやましさ:相手のようになりたいと感じ、自分を高めようとする。
2. 悪意のあるうらやましさ:相手の立場を下げたい、引きずり下ろしたいと感じる。
van de Venらは、オランダ・アメリカ・スペインの人を対象に、うらやましさの体験を調べました。その結果、うらやましさには二つの種類があり、前向きなうらやましさは「自分も上がりたい」という気持ちに、悪意のあるうらやましさは「相手を下げたい」という気持ちにつながっていました。[3]
持ち物や髪型を真似する人の多くは、前のほうに近いと考えられます。相手を素敵だと感じ、「あの人のようになりたい」と思うからこそ、同じものを選ぶのです。一方で、真似したうえで相手を下げる言動が続くなら、張り合いや悪意が混ざっているかもしれません。嫉妬しやすい性格の科学も参考になります。
真似する人との付き合い方、自分が真似してしまう場合
真似されて困るときは、まず「何がいやなのか」を自分の中で分けてみるのがおすすめです。同じ服を着られるのは気にならなくても、自分の考えを自分のもののように話されるのはつらい、ということはよくあります。本当に困ることだけを、「この案は私が考えたものだと伝えてほしい」のように、具体的に頼みましょう。
持ち物や好みの真似は、相手があなたを好意的に見ている表れのこともあります。おすすめの店や選び方を先に教えて、相手が自分で選べるようにすると、同じものばかりになる状況はやわらぎます。距離を置きたいときは、身につけるものの話題をあまり出さないのも一つの方法です。
自分がつい真似してしまう人は、真似した理由を一つだけ言葉にしてみてください。「似合っていて素敵だった」「同じものを持つと安心する」など、理由が分かると、自分が本当に好きなものも見えてきます。そして、取り入れたものは「〇〇さんが教えてくれた」と口に出すだけで、相手の受け取り方は大きく変わります。
「真似する人」と決めつけない
流行っているものが重なっただけ、同じ店をよく使うだけ、ということもあります。一度や二度似ただけで、相手を「真似する人」と決めないようにしましょう。
真似にとどまらず、仕事の成果を何度も奪われる、つきまといのような行動が続くなど、強い負担を感じるときは、ひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話してみてください。
真似の多くは、悪意ではなく、「近づきたい」「仲間でいたい」という気持ちの表れです。そう知っているだけで、相手との距離の取り方を落ち着いて選べるようになります。
印象ひとつで、人柄を決めない
ビッグファイブ診断は、協調性や外向性を含む五つの傾向を振り返る道具です。相手が真似する理由を判定する検査ではありません。
参考にした研究
- Chartrand TL, Bargh JA(1999)The chameleon effect: The perception–behavior link and social interaction. Journal of Personality and Social Psychology, 76(6), 893–910. DOI
- Lakin JL, Chartrand TL, Arkin RM(2008)I am too just like you: Nonconscious mimicry as an automatic behavioral response to social exclusion. Psychological Science, 19(8), 816–822. DOI
- van de Ven N, Zeelenberg M, Pieters R(2009)Leveling up and down: The experiences of benign and malicious envy. Emotion, 9(3), 419–429. DOI