「また変わった」——MBTIあるある

MBTIを受けたことがある人に、聞きたいことがある。

前回と結果が変わったこと、ないだろうか。三ヶ月前にINTJだったのに、今日やったらENFPになっていた。半年前にINFJだったのが、今はISFP。前の方がしっくりきてたのに、今回は違う自分が出てしまった。

これ、結構多くの人が経験しているはずだ。SNSで「MBTI結果変わった」と検索すると、同じように悩んでいる人がごろごろ出てくる。「自分がどのタイプかまだ確定できない」と何度も受け直している人もいる。

気になるのは、性格ってそんなに短期間でガラッと変わるものなのか、ということだ。昨日は内向的だったのに今日は外向的。先週は直感型だったのに今週は感覚型。そんなはずはない。

でも「結果が変わる」こと自体は、そこまで深刻な問題ではないかもしれない。MBTIは娯楽として楽しむものだし、その時の気分で少し答えが傾くのは当然だ。

問題は、その結果を使って何かを判断しようとした時だ。「この仕事に向いてる」「この人との相性がいい」「自分の強みはこれだ」——ここまで踏み込むと、結果が変わる事実は無視できなくなる。

この記事では、MBTIの結果がなぜ変わるのか、そして科学的な視点から見たときにどんな弱点があるのかを、3つのポイントで整理する。

弱点1:結果が安定しない

心理学には「再検査信頼性」という言葉がある。同じ人に同じテストを2回受けさせて、同じ結果が出るかを確かめる方法だ。当然、ちゃんとしたテストなら同じ結果になる。測っているのは性格だから、数週間で変わるはずがない。

MBTIでこの検証をすると、かなりの確率で結果が変わる。

ある研究では、5週間後に同じ人にMBTIを受け直してもらったところ、約50%の人が別のタイプに分類された。半分だ。テストを受けた半分の人が、別の性格タイプになっている。

これが何を意味しているかというと、
MBTIの分類軸は「境界線」で人を切っているということだ。

たとえば外向性と内向性の境界線。60点だと外向的、40点だと内向的、というふうに真ん中で切る。でも自分が55点だった場合、今日は少し元気だから60点を超えて外向的になるし、疲れている日は50点を下回って内向的になる。本質は何も変わっていないのに、結果だけが変わってしまう。

ビッグファイブでは、この境界線で切らない。外向性が55点なら55点とそのまま出す。58点の日も52点の日も、「やや外向的寄り」という同じ位置にいる。数字が少し揺れるだけで、分類そのものは変わらない。

「あなたはEです」「あなたはIです」という二択はわかりやすい。でも、そのわかりやすさの裏で、境界線付近にいる多くの人が毎回違う自分を見せられている。

この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。

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弱点2:なりたい自分が出てしまう

MBTIの質問を見たとき、「こう答えたらこういうタイプになるな」と感じたことがあるだろう。

「あなたは計画的ですか?」「人の前で話すのは好きですか?」「新しいアイデアを思いつきますか?」

これらの質問、何が起きているかというと、自分がどうありたいかで答えが変わってしまうのだ。

自分を「計画的な人間だと思いたい」人は「はい」と答える。自分を「アイデアマンだと思いたい」人も「はい」と答える。質問が直接的すぎて、自分の理想像がそのまま結果に反映されてしまう。

心理学ではこれを「社会的望ましさのバイアス」と呼んでいる。自分がどうあるかではなく、どうあるべきかで答えてしまう現象だ。誰も「私は全く計画的ではありません」とは答えたくない。

実際にあった話を一つ。

ある人がMBTIを受けて「リーダーに向いているタイプ」という結果が出た。その人はずっとリーダーに向いていると思っていたから、この結果を見て嬉しかった。同僚にも「やっぱり私ってリーダー向きなんだって」とアピールしていた。

でも周りの人は、全く逆の印象を持っていた。人の話を聞かない、決断が独断的、チームの意見をまとめるのが苦手。MBTIの結果と、周りが見ている本人の姿が、まるで違っていた。

ここで一つ気づいてほしいことがある。

この「なりたい自分が結果に出る」という仕組みこそが、MBTIがあんなに広まった理由だとしたらどうだろう。

結果を見て「やっぱりね!」と思うから、SNSに載せたくなる。自分を肯定してくれるから、友達にもやりたくなる。「あなたはINFJです。希少なタイプで、人の気持ちがわかる繊細な性格です」と言われたら、嬉しくない人は少ないだろう。

つまりMBTIは、エンタメとしては本当に優秀なのだ。自分を気持ちよく肯定してくれる。話のネタになる。人と比べたくなる。共有したくなる。

でも、「自分がなりたい結果」が出ているということは、「実際の自分」が出ているわけではない。エンタメとして優秀なことと、性格を正しく測れていることは、別の話だ。

ビッグファイブの質問は、この問題を減らす作りになっている。「あなたは計画的ですか」と聞くのではなく、「自分の部屋を片付けたことがある」「約束の時間に遅れたことがある」といった具体的な行動を聞く。なりたい自分で答える余裕が少ない。

全くなくなるわけではない。でも、MBTIよりは「実際の自分」に近い数字が出る確率が高い。

弱点3:16タイプに押し込める問題

MBTIは人を16のタイプに分ける。

4つの軸(外向・内向、感覚・直感、思考・感情、判断・知覚)を二択で判定して、その組み合わせで16通り。INTJ、ENFP、ISTP……というやつだ。

16通り。
世界中に80億人がいて、16通り。

これだけで少し違和感があるかもしれない。でも問題は数だけではない。二択で切るという仕組み自体に無理がある。

たとえば、外向的でも内向的でもない人はどこに行くのか。

大勢の中では話せるけれど、一人でいる時間も好き。初対面では静かだけど、仲良くなるとよくしゃべる。飲み会には行くけど、翌日は一人で回復しないと動けない。

この人は外向的か、内向的か。

現実には、こんな人はごまんといる。外向性と内向性の間にいて、場面によってどちらにも傾く。これが普通だ。性格はグラデーションなのだ。

でもMBTIは、この人を強制的にどちらかに分類する。今回のテストで外向性が52点だったら「E」。48点だったら「I」。2点の違いで、別のタイプになってしまう。

しかも、この2点の違いが他の軸とも組み合わさる。外向性が変わるだけで、INTJがENTJになる。ISTPがESTPになる。結果として、全体像がガラッと変わってしまう。

ビッグファイブでは、これを「グラデーションのまま」扱う。外向性は3段階でも5段階でもなく、連続した数字で出す。「あなたの外向性は55点です」という結果を見れば、自分がどのあたりにいるのかがわかる。境界線のこっち側かあっち側か、という議論自体が不要になる。

16タイプの分類は、話題としては面白い。「あなたは何タイプ?」と聞き合うのは楽しい。でも、その16の箱に自分を無理やり入れ続ける必要はない。人間はもっと複雑で、もっと面白い。

科学は嫌いじゃない。測り方が違かっただけ

ここまで3つの弱点を書いてきたけど、MBTIを否定したいわけではない。

実際、MBTIは娯楽としてはすごく良くできている。友達と「何タイプ?」と盛り上がれる。SNSで自己紹介代わりに使える。自分を知るきっかけになる。それ自体は悪いことじゃない。

ただ、知っておいてほしいことがある。

MBTIは「自分を分類して楽しむ」ために作られたもので、「自分を正しく測る」ために作られたものではない。ユングの性格理論をもとに、母娘が自分たちの観察で作った分類だ。彼女たちが悪いわけではない。ただ、科学的な検証を経た測定ツールではない。

ビッグファイブは、そこが逆だ。

最初から「性格をどう測るか」をデータから探した。世界中の研究者が何十年もかけて、何千人もの人を調べて、「この5つの要素で性格の大部分を説明できる」と結論づけた。論文の数は数千本。再現性の検証も何度もされている。

だからビッグファイブだと、三ヶ月前に受けた結果と今日の結果が大きくは変わらない。自分がなりたい結果ではなく、実際の行動傾向に近い数字が出る。グラデーションのまま結果が出るので、16の箱に押し込められない。

「MBTIが好きなら、それでいい」と思う。楽しいからやる、というのは立派な理由だ。

ただ、「自分をちゃんと知りたい」「仕事選びの参考にしたい」「人間関係のヒントが欲しい」と思っているなら、測り方を選ぶといい。目的に合った道具を使う。それだけの話だ。