「マイペースな人」と言われる、よくある場面

みんなが急ぎ足で駅へ向かう中、ひとりだけゆっくり歩いている。グループで集まっても、気になるお店があれば一人で寄り道する。仕事では、周りが慌てていても自分の順番どおりに片づけていく。そんな人は、よく「マイペースな人だね」と言われます。

マイペースな人の特徴としてよく挙がるのは、周りに急かされても速さを変えない、自分のやり方や順番を大切にする、人と比べて焦ることが少ない、一人で過ごす時間も楽しめるといったものです。落ち着いていて頼もしいと見られる一方で、「合わせてくれない」「のんびりしすぎ」と受け取られることもあります。

約束の時間に遅れてしまうことが多い人は時間を守れない・遅刻する人は性格?で、場の雰囲気をつかみにくい人は空気が読めない人の心理で取り上げました。この記事では、時間や約束を守っていても、物事を進める速さや順番が周りとちがう人に目を向けて、その心の中を考えます。

マイペースな人は、周りを無視しているわけではない。
自分にとって無理のない速さを、よく知っているのだ。

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「速い・遅い」の物差しは、場所によって変わる

LevineとNorenzayanは、世界31か国の大きな都市で、生活の速さを三つの方法で測りました。街なかを歩く人の速さ、郵便局で簡単な手続きが終わるまでの速さ、そして街の時計がどれだけ正確か、です。[1]

その結果、生活の速さがもっとも速かったのは、日本と西ヨーロッパの国々でした。また研究者たちは、生活の速さはその土地の文化と深く結びついていて、そこに暮らす人の性格の感じ方にも関わると考えています。

つまり、日本はもともと周りの速さが速い場所です。同じ速さで動いていても、速い街の中では「ゆっくりな人」として目立ちやすくなります。マイペースな人が目につくのは、本人の速さだけでなく、周りの物差しが速いからという面もあるのです。反対に、待つことが苦手な人の心理はせっかちで人を待てない人の心理で取り上げています。

仕事の進め方の速さには「型」がある

1. 締め切り型:締め切りの直前に、短い時間で一気に仕上げる。

2. こつこつ型:最初から最後まで、同じくらいの量を少しずつ進める。

3. 最初と最後型:始めと終わりに力を入れ、間は少し休む。

Geversたちは、締め切りに向かって力をどう配分するかを「ペースの型」と呼び、上の三つに分けて測る質問票を作りました。学生や大学の教員、会社員など、八つの集まりで調べたところ、この型は時間がたっても場面が変わっても、ある程度安定していたと報告されています。[2]

マイペースな人とは、この型がはっきりしていて、周りに合わせて変えることが少ない人だと考えることもできます。こつこつ型の人から見ると締め切り型の人はのんびりに見え、締め切り型の人から見るとこつこつ型の人は急ぎすぎに見えます。どちらが正しいかではなく、型がちがうだけなのです。

ペースのちがう人どうしが一緒に働くと

では、ペースの型がちがう人が同じチームで働くと、どうなるのでしょうか。Geversたちは、31のグループを時間を追って調べました。[3]

その結果、メンバーのペースの型が似ていることと、時間についての声かけをし合うことが、「いつまでに何をするか」という見通しをそろえることにつながっていました。ただし、見通しがそろうだけでは十分ではなく、そろった見通しが締め切りを守る助けになるか、かえって妨げになるかは、メンバーのペースの型によることも分かりました。

ここから分かるのは、ペースのちがいそのものが問題なのではなく、ちがいを言葉にしないまま進めることがすれちがいを生みやすい、ということです。周りに合わせることをあまり重く見ない性格については協調性が低い人の特徴も参考になります。ただ、マイペースな人がみな協調性が低いわけではありません。

マイペースな人との付き合い方、自分がそうなら

周りにマイペースな人がいるときは、「早くして」と急かすより、途中の目安を一緒に決めるのがこつです。「金曜までに半分できているとうれしい」「出る十分前に一度声をかけるね」と、いつ・どこまでを具体的に伝えると、相手は自分の速さを保ったまま合わせやすくなります。最後に一気に仕上げる型の人には、途中で急かすより、最終の締め切りを早めに伝えるほうが効くこともあります。

反対に、自分が「マイペースだね」と言われることが多い人は、自分のペースの型を言葉にして先に伝えておくことから始めてみてください。「最後にまとめて仕上げるタイプなので、前日には必ず出します」と言えれば、周りは安心して待てます。人と一緒に動く場面では、待ち合わせや集合の時間だけは周りの物差しに合わせる、と決めておくのも一つの方法です。

うっかりが重なって周りを驚かせてしまうことが多い場合は、天然な人の心理もあわせて読むと、自分の傾向を分けて考えやすくなります。

「マイペースな人」と決めつけない

物事を進める速さは、性格だけでなく、その日の体調や仕事の量、慣れているかどうかにも左右されます。ある場ではのんびりして見える人が、得意なことでは驚くほど速く動いていることもよくあります。一つの場面だけで、その人を判断しないようにしましょう。

また、マイペースであることには、周りの焦りに流されずに落ち着いて考えられる、という良さもあります。急いでいる場ほど、一人だけ速さを保っている人が、ミスに気づいたり、全体を見直したりする役を担ってくれることがあります。

マイペースな人の多くは、周りを軽く見ているのではなく、自分にとって無理のない速さを知っているのです。ペースのちがいを責め合うのではなく、言葉にしてすり合わせることで、速い人とゆっくりな人がお互いの良さを生かし合えるようになります。

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参考にした研究

  • Levine RV, Norenzayan A(1999)The pace of life in 31 countries. Journal of Cross-Cultural Psychology, 30(2), 178–205. DOI
  • Gevers JMP, Mohammed S, Baytalskaya N(2015)The conceptualisation and measurement of pacing styles. Applied Psychology, 64(3), 499–540. DOI
  • Gevers JMP, Rutte CG, Van Eerde W(2006)Meeting deadlines in work groups: Implicit and explicit mechanisms. Applied Psychology, 55(1), 52–72. DOI