ネガティブな人に、よくある場面
新しい計画を話すと、まず「でも失敗したらどうする?」と返ってくる。楽しみな予定の前日にも、雨や渋滞の心配ばかりしている。ほめても「たまたまだよ」と受け取らない。ネガティブな人と話していると、こちらの気持ちまで少しずつ沈んでいくように感じることがあります。
ネガティブな人の特徴としてよく挙がるのは、先に悪い結果を想像する、「どうせ無理」と言う、うまくいったことより失敗を長く覚えている、といったものです。
不満を口に出して吐き出す場合は愚痴が多い人の心理で、自分を責めやすい場合は自己肯定感が低い人の特徴で取り上げました。この記事では、物事をつい悪い方へ考えてしまう場合を考えます。
人の心は、もともと悪いことに強く反応するようにできている。
一つの口ぐせで、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、普段の考え方や気持ちの動き方を振り返れます。
自分の五つの性格を測る(無料)悪いことは、良いことより強く心に残る
Baumeisterらは、日常の出来事、人間関係、受け取る評価、学習など、幅広い分野の研究をまとめました。その結果、悪い出来事や悪い評価は、同じくらいの良いものより大きな影響を与え、より丁寧に考えられやすいことがわかりました。[1]悪い印象は早くでき、なかなか消えません。反対の例は、ほとんど見つからなかったといいます。
つまり、悪い方へ目が向くのは、ネガティブな人だけの特別な性質ではありません。誰の心にも、危険や失敗を見落とさないための仕組みがあります。ネガティブな人は、その仕組みの感度が人より少し高いと考えると、わかりやすいかもしれません。
ビッグファイブでは、不安や心配を感じやすい傾向を「感受性(神経症傾向)」と呼びます。この傾向が高い人は、同じ出来事でも危うさに先に気づきやすく、そのぶん心が疲れやすくもあります。一方で、危険を早く見つけて備えられるという面もあります。
「悪い想像」が、準備になっている人もいる
NoremとCantorは、大事な場面の前にわざと期待を低くし、うまくいかない場合をあれこれ想像する「防衛的悲観主義」という考え方の人たちを調べました。こうした人たちは、悪い想像をすることで不安を行動の力に変えていて、その考え方を邪魔されると、かえって成績が下がりました。邪魔されなかった人たちの成績は下がりませんでした。[2]
ネガティブな人に「大丈夫だよ、前向きに考えて」と励ましても、うまくいかないことがあるのはこのためです。本人にとって悪い想像は、不安を抑えて準備するための手順になっている場合があります。
ただし、同じ悪いことを何度も頭の中でくり返す「反すう」は別です。Nolen-Hoeksemaらのまとめによると、反すうは落ち込みを強め、考えをさらに否定的にし、問題を解く力や、行動に移す力をそこなうことが示されています。[3]一方で、気分を明るくする気晴らしが、落ち込んだ気分をやわらげることも、多くの実験で示されています。[3]
見分けるこつは、悪い想像のあとに「だからこう備える」が続くかどうかです。備えにつながっているなら準備、同じ心配が堂々めぐりしているなら反すうです。
たとえば、発表の前に「質問に答えられなかったらどうしよう」と考え、想定問答を三つ用意する人は、悪い想像を準備に使っています。反対に、発表が終わったあとも「あの言い方はまずかった」と何日も同じ場面を思い返している場合は、考えるほど気分が重くなるだけで、次に生かせることはあまり増えません。
ネガティブな人との上手な付き合い方
1. 心配を否定せず、備えに変える:「考えすぎだよ」と打ち消すより、「もしそうなったら、どうしておく?」と聞くと、悪い想像が準備の話に変わります。
2. 気分が沈む話は、時間を区切る:同じ心配がくり返されるときは、「今日はここまでにして、散歩でもしよう」と、話題や場所を切り替えるのも一つの方法です。
3. 自分の気持ちを守る距離を持つ:相手の不安をすべて引き受ける必要はありません。聞くのがつらいときは、そう伝えてよいのです。
反対に、自分がネガティブだと感じる人は、悪い想像が浮かんだら、その横に「では、何を準備するか」を一行だけ書き出してみてください。心配が具体的な行動になると、頭の中のくり返しが止まりやすくなります。
職場では、ネガティブな意見をはじめから「水を差す」と退けないことも大切です。会議で「心配な点を出す時間」をあらかじめ設けておくと、慎重な人の指摘が、計画を良くするための材料として生きてきます。
「ネガティブな性格」と決めつけない
慎重に先を読む人がいるから、チームが大きな失敗を避けられることもあります。ネガティブさは、短所であると同時に、危険に早く気づく力でもあります。前向きな人と慎重な人の両方がいるほうが、物事はうまく回りやすいものです。
ただし、気分の落ち込みが長く続く、眠れない、好きだったことを楽しめない、という状態が続く場合は、性格の問題と決めつけず、医療機関や相談窓口に早めに相談してください。
悪い方に考える力は、使い方しだいで備える力になります。心配を打ち消すのではなく、準備に変える。くり返しになったら、そっと気分を切り替える。それが、ネガティブな人とも自分のネガティブさとも、上手に付き合う近道です。
口ぐせひとつで、人柄を決めない
ビッグファイブ診断は、感受性(神経症傾向)を含む五つの傾向を振り返る道具です。相手がネガティブかどうかを判定する検査ではありません。
参考にした研究
- Baumeister RF, Bratslavsky E, Finkenauer C, Vohs KD(2001)Bad is stronger than good. Review of General Psychology, 5(4), 323–370. DOI
- Norem JK, Cantor N(1986)Defensive pessimism: Harnessing anxiety as motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 51(6), 1208–1217. DOI
- Nolen-Hoeksema S, Wisco BE, Lyubomirsky S(2008)Rethinking rumination. Perspectives on Psychological Science, 3(5), 400–424. DOI