「運がいい人」とは、どんな人?
くじによく当たる、困ったときに助けてくれる人が現れる、たまたま入ったお店で良い出会いがある。周りから「あの人は運がいい」と言われる人には、いくつかの姿が混ざっています。
この記事では、運を「本人には選べない偶然」と「偶然に出会ったあとの受け止め方」に分けて考えます。偶然そのものは誰にも操作できません。一方で、「自分は運がいい」と感じるかどうかや、偶然をどう生かすかには、人による違いがありそうです。
星座や血液型のように、生まれで運勢が決まるという話とは分けて扱います。性格と占いの違いが気になる人は、占いと性格診断の違いも参考にしてください。
でも、受け止め方は選べる。
偶然の出来事を、自分はどう受け止めやすい?ビッグファイブ診断では、外向性や開放性、感受性(神経症傾向)など五つの性格傾向を振り返れます。運の良し悪しを判定する検査ではありません。
自分の五つの性格を測る(無料)「自分は運がいい」と思う人は、気持ちが安定しやすい?
心理学では、「自分は幸運に恵まれやすい」と信じる度合いを質問紙で測る研究があります。運の良さそのものではなく、本人がどう感じているかを測るものです。
DayとMaltbyは、大学生144人に、幸運を信じる度合いと、落ち込み・不安・楽観性・自尊心などを答えてもらいました。その結果、幸運を信じる人ほど楽観的で、落ち込みや不安が低い傾向がありました。研究者は、幸運を信じることが楽観的な見通しにつながり、それが気持ちの安定と関係しているという説明が最も当てはまると考えています。[1]
ただし、これは一時点の調査です。「運がいいと信じれば元気になる」と原因まで決めることはできませんし、気持ちが安定している人が自分を運がいいと感じやすい、という逆の流れも考えられます。学生を対象にした一つの研究であることにも注意が必要です。
それでも、同じ出来事でも「ついていた」と受け止める人と、「どうせ自分は」と受け止める人がいることは、日常でも思い当たるのではないでしょうか。物事を悪い方へ考えやすい傾向については、ネガティブな人の心理でも詳しく扱っています。
お守りで本当に成績は上がる?
「お守りを持つと実力が出せる」という話を聞いたことがあるかもしれません。2010年に発表された研究では、「これは幸運のボールです」と伝えられた人のほうが、ゴルフのパットを多く入れたと報告され、話題になりました。理由として、自信が高まり、粘り強く取り組めたことが挙げられていました。
ところが、Calin-JagemanとCaldwellが、人数を増やし、事前に手順を登録したうえで同じ実験をやり直したところ、幸運のボールを渡された人と、普通のボールの人とで、成績はほぼ変わりませんでした。過去の研究をまとめた分析でも、設計がしっかりした研究ほど効果は見られなかったとしています。[2]
お守りや験担ぎを大切にすること自体は、まったく悪いことではありません。気持ちを落ち着ける習慣として役立つ人もいるでしょう。ただ、お守りがあるから大丈夫、と準備を減らす理由にはならないと考えておくのが安全です。
成功には、思っている以上に偶然が混ざる
反対に、「成功した人は努力したから」「うまくいかない人は努力が足りないから」と、結果を本人の力だけで説明したくなることもあります。
Pluchinoたちは、才能の違う多数の人がランダムに幸運や不運な出来事に出会う様子を、コンピューター上で再現しました。すると、ある程度の才能は必要でも、最も大きな成功を収めたのは、最も才能のある人ではなく、平均的な才能で運に恵まれた人であることが多かったのです。[3]
これは実際の人生を調べたものではなく、単純化した計算上の模型です。現実の成功のうち何割が運か、という数字を出すことはできません。それでも、うまくいった人の話を聞くとき、そして自分がうまくいかなかったときに、偶然の分を差し引いて考える手がかりになります。
「運がいい人」をうらやましく感じたら、相手の努力を軽く見る必要も、自分を責める必要もありません。結果には本人に選べない部分がある、と知っておくだけで、比べ方が少しやわらぎます。
性格は、偶然との出会い方に関わるかもしれない
ここからは研究で確かめられた結論ではなく、ビッグファイブの考え方を手がかりにした見方です。
たとえば外向性が高い人は、人と話す機会が多い傾向があります。会話の数が多ければ、思いがけない誘いや情報に出会う場面も増えるかもしれません。開放性が高い人は、初めての場所や方法を試すことに抵抗が少なく、偶然の発見を楽しみやすいとも考えられます。
一方、感受性(神経症傾向)が高い人は、うまくいかなかった出来事を強く覚えていて、「自分は運が悪い」と感じやすい可能性があります。ただ、慎重さは危ない話を避ける力にもなります。感受性が高い人の強みも合わせて読んでみてください。
どの性格でも、運を引き寄せる正解は一つではありません。自分がどんな場面で偶然に気づきやすいかを知ることが、最初の一歩になります。
偶然を生かすための三つの工夫
以下は、研究が直接効果を確かめた方法ではなく、日常で取り入れやすい提案です。
一つ目は、いつもと少しだけ違う道を選ぶこと。通る道、立ち寄るお店、話しかける相手を、週に一度だけ変えてみます。出会う偶然の種類が変わります。
二つ目は、良かった偶然を書き留めること。悪い出来事ほど記憶に残りやすいものです。「今日ついていたこと」を一行書くと、見落としていた幸運に気づけます。
三つ目は、準備を運に任せないこと。験担ぎは気持ちを整えるために使い、練習や確認はいつもどおり続けます。偶然が来たときに、つかめる準備が残ります。
運がいい人は、特別な力を持っているとは限りません。偶然を否定せず、偶然だけに頼らない。その間でバランスを取れる人が、周りから「運がいい」と見えるのかもしれません。
外向性・開放性・感受性を含む五つの性格傾向から、自分と偶然との付き合い方を振り返ってみましょう。
ビッグファイブ診断を受ける(無料)参考文献
- Day, L., & Maltby, J. (2003). Belief in good luck and psychological well-being: The mediating role of optimism and irrational beliefs. The Journal of Psychology, 137(1), 99–110. 論文(DOI)
- Calin-Jageman, R. J., & Caldwell, T. L. (2014). Replication of the superstition and performance study by Damisch, Stoberock, and Mussweiler (2010). Social Psychology, 45(3), 239–245. 論文(DOI)
- Pluchino, A., Biondo, A. E., & Rapisarda, A. (2018). Talent versus luck: The role of randomness in success and failure. Advances in Complex Systems, 21(3–4), 1850014. 論文(DOI)