知ったかぶりは三つに分けると見えやすい

知ったかぶりは、外から見ると同じ「知らないのに知っている顔をする」行動です。けれど、中身は少なくとも三つに分かれます。

一つ目は見栄です。知らないと思われたくない、話の輪から外れたくないという気持ちから、分かったふりをします。この場合、本人も心のどこかで「よく知らない」と気づいています。

二つ目は思い込みです。聞いたことがある気がする、似た言葉を知っている、という感覚を「知っている」と取り違えています。本人には嘘をついている自覚がありません。

三つ目は場の空気です。会議で全員がうなずいている、相手が当然知っている前提で話している。そうした場面では、知らないと口にする負担が大きくなります。

「知らないのに知っていると言った」だけでなく、
本人がそれに気づいているかを見る。

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存在しない言葉を「知っている」と答える

知ったかぶりを測るために、心理学では実在しない項目を混ぜる方法が使われています。Paulhusらは、人物、出来事、製品などの名前を並べ、どれくらい知っているかを答えてもらいました。項目の約2割は存在しない名前です。[1]

存在しない名前に「知っている」と答える傾向は「過大主張」と呼ばれ、実在する項目を見分ける正確さとは分けて数値にできます。研究では、この指標は自分をよく見せる傾向を測る他の尺度とそろって動く一方、認知能力とは独立していました。架空の項目が混ざっていると事前に知らせても、指標は意味を失いませんでした。

では、過大主張は性格の型で決まるのでしょうか。Benschらは798人に、自分をよく見せる傾向を測るさまざまな方法と、Big Five、誇大的な自己愛、認知能力をまとめて実施しました。その結果、過大主張は既知の性格尺度から独立した、最も独自の指標だと報告されています。[3]

つまり、「この性格の人は知ったかぶりをする」と単純には言えません。知ったかぶりは、性格の五つの軸とは別に、知識への自己評価や場面の影響を受けて起きる行動として見るほうが近そうです。

「詳しいつもり」が知らないことまで広げる

Atirらは、自分の詳しさの感じ方に注目しました。金融知識に自信がある人ほど、実際の知識とは別に、存在しない金融用語を「知っている」と答えやすいことが示されました。[2]

この関係は分野ごとに見られ、生物学に詳しいと感じる人は生物学の架空の用語で過大主張をしやすくなりました。架空の用語が含まれていると警告しても関係は弱まらず、研究者は見栄を張るためだけでは説明しにくいと考えています。さらに、地理に詳しいと感じるよう操作された人は、存在しない地名にも見覚えがあると答えやすくなりました。

ここから分かるのは、知ったかぶりが「詳しくない人」だけの問題ではないことです。得意分野だと思っているほど、聞き覚えのない言葉も手持ちの知識に引き寄せてしまうことがあります。

KrugerとDunningの研究では、ユーモア、文法、論理のテストで下位4分の1の参加者が、実際は下から12%ほどの成績なのに、自分を上位寄りの62%付近と見積もりました。[4]ただし、学生を対象にした課題での結果で、統計上の偏りでも一部説明できるという議論があります。「能力が低い人ほど知ったかぶりをする」と言い切る根拠にはしないほうが安全です。

困る知ったかぶり、困らない知ったかぶり

雑談で話を合わせるための小さな知ったかぶりは、多くの人が経験します。話の流れを止めないための相づちに近く、それだけで信用を失うわけではありません。

困るのは、知らないまま判断や作業が進む場面です。仕事の手順、医療やお金の情報、子どもの安全に関わる話では、「知っているつもり」が誤りを広げます。周囲が気づいたときには、本人も引っ込みがつかなくなっていることがあります。

相手が専門家や上司でも同じです。立場があると「知らない」と言いにくくなり、知ったかぶりは起きやすくなります。肩書きで信用するのではなく、根拠を一緒に見られる関係かどうかを見るほうが安全です。

もう一つの困りごとは、知ったかぶりが積み重なって、周りが本人の話を確かめ直す手間を負うことです。本人に悪意がなくても、「あの人の『知っている』は当てにならない」という印象が残ります。

責めずに確かめる言い方

知ったかぶりを減らす鍵は、知らないと言っても損をしない場を作ることです。本人の側と周囲の側で、できることが違います。

本人:得意分野ほど「聞いたことがある」と「説明できる」を分ける。説明できないなら「たぶん」「あとで確かめます」を添える。

周囲:「本当に知ってる?」と問い詰めず、「念のため一緒に確認しよう」と作業として確かめる。

場:先輩や上司が先に「それは知らない、教えて」と言う。知らないと言う人が一人いると、他の人も言いやすくなる。

確認が必要なのは、判断や安全に関わる話のときだけで十分です。雑談の知ったかぶりまで一つずつ指摘すると、相手は次から黙るか、もっと上手に隠すようになります。

知ったかぶりは嘘つきの印ではなく、「知っているつもり」と「知らないと言いにくさ」が重なったときに出やすい行動です。責めるより、確かめやすい言い方を先に用意しておくほうが、本人にも周りにも負担が少なくなります。

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参考にした研究

  • Paulhus DL, Harms PD, Bruce MN, Lysy DC(2003)The over-claiming technique: Measuring self-enhancement independent of ability. Journal of Personality and Social Psychology, 84(4), 890–904. DOI
  • Atir S, Rosenzweig E, Dunning D(2015)When knowledge knows no bounds: Self-perceived expertise predicts claims of impossible knowledge. Psychological Science, 26(8), 1295–1303. DOI
  • Bensch D, Paulhus DL, Stankov L, Ziegler M(2019)Teasing apart overclaiming, overconfidence, and socially desirable responding. Assessment, 26(3), 351–363. DOI
  • Kruger J, Dunning D(1999)Unskilled and unaware of it: How difficulties in recognizing one's own incompetence lead to inflated self-assessments. Journal of Personality and Social Psychology, 77(6), 1121–1134. DOI