「あの人は人たらしだ」と言われる人

初めて会ったのに、気づけば話がはずんでいる。年上にもかわいがられ、年下からも頼られる。職場でも近所でも、なぜかその人のまわりには人が集まる。そんな人は、よく「人たらし」と呼ばれます。

人たらしな人の特徴としてよく挙がるのは、相手の話をよく聞く、名前や前に話したことを覚えている、自分の失敗も気軽に話す、相手のいいところを自然にほめるといったものです。「人たらし」はもともと、人をうまくだます人という意味もあった言葉ですが、いまは「誰からも好かれる人」をほめる意味で使われることが多くなっています。

よく似た言葉に「八方美人」や「あざとい」があります。誰にでもいい顔をして、断れずに疲れてしまう人は八方美人な人の心理で取り上げました。この記事では、自分を良く見せようとするより、相手に関心を向けることで好かれている人に目を向けて、その心の中を考えます。

人たらしは、自分を売りこむのがうまい人ではない。
相手のことを知ろうとするのが、うまい人なのだ。

一つの印象で、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、人との関わり方を振り返れます。

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好かれる人は「質問」が多い

Huangたちは、初対面の人どうしの会話を調べ、質問の数と好かれやすさの関係を確かめました。[1]

その結果、質問を多くする人ほど、会話の相手から好かれていました。とくに効いていたのは、相手の答えを受けて「それで、どうなったんですか」と重ねてたずねる「続きの質問」です。お見合い形式の短いデートの会話を調べた研究でも、続きの質問が多い人ほど、相手から「また会いたい」と言われやすくなっていました。

研究者たちは、質問が好かれる理由を、「ちゃんと聞いて、分かろうとしてくれている」と相手が感じるからだと説明しています。おもしろいのは、多くの人が「質問をすると好かれる」とは予想していなかったことです。人たらしな人は、話のうまさより先に、聞くうまさを持っているのかもしれません。

自分のことも、ちゃんと話している

ただし、質問ばかりでは取り調べのようになってしまいます。CollinsとMillerは、自分のことを打ち明ける「自己開示」と好かれやすさについて、多くの研究をまとめて分析しました。[2]

1. 自分のことを深く話す人は、あまり話さない人より好かれやすい。

2. 人は、もともと好きな相手に、より多くのことを話す。

3. 人は、自分のことを打ち明けた相手を、そのあと好きになりやすい。

三つ目はとくに大事です。人たらしな人と話したあと、「なぜかあの人には何でも話してしまった」と感じることがあります。相手に話してもらえる雰囲気をつくると、話した側がその人を好きになるという流れが生まれるのです。人たらしな人が自分の失敗談を先に話すのは、相手が話しやすくなる入口をつくっているとも言えます。

ほめ言葉は効く。でも、見すかされると

では、ほめたり、相手に合わせたりするのはどうでしょうか。Gordonは、相手に気に入られようとするふるまい(ほめる、意見を合わせる、親切にするなど)の研究をまとめて分析しました。[3]

その結果、こうしたふるまいには、仕事の評価を上げる効果は小さい一方で、「好き」という気持ちを高める効果ははっきりあったと報告されています。ただし、その効き方は、ねらいが見すかされているかどうかや、言われた本人か、そばで見ていた人かなどによって変わっていました。

ここに、人たらしと「あざとい」「八方美人」とのちがいがありそうです。気に入られることそのものが目的になったほめ言葉は、相手や周りに見すかされやすくなります。人たらしな人のほめ言葉が嫌みにならないのは、相手をよく見ていて、本当にいいと思ったところを言葉にしているからでしょう。反対に、人をほめるのが苦手な人の心理は人を褒めない人の心理で取り上げています。

ビッグファイブで見る人たらし

性格の五つの特性で見ると、人たらしな人は、人と関わることでエネルギーがわく外向性が高い人や、相手の気持ちを思いやる協調性が高い人に近いと考えられます。

ただし、ここまで見てきた研究が示しているのは、好かれる理由の多くが、生まれつきの性格よりも、質問する・自分のことを話す・本当にいいと思ったところを伝える、という行動にあるということです。静かな人でも、続きの質問を一つ増やすだけで、相手の受け止め方は変わりえます。人たらしは、ある程度まねできる技術でもあるのです。

人たらしになりたいとき、決めつけたくなるとき

自分も人たらしになりたいと思ったら、まずは次の会話で、続きの質問を一つだけ増やすことから始めてみてください。「それはどうしてですか」「そのあと、どうなったんですか」と聞くだけで、相手は「聞いてもらえた」と感じやすくなります。うまく話そうとがんばるより、ずっと簡単です。

反対に、まわりの人たらしを見て「計算でやっているのでは」と感じることもあるでしょう。けれど、好かれる人のふるまいの多くは、相手への関心から自然に出ているものです。一つの場面だけで「腹黒い」と決めつけないようにしましょう。

嫌われるのが怖くて、つい誰にでも合わせてしまう人は、人に嫌われるのが怖い人の性格もあわせて読むと、好かれようとする気持ちとの付き合い方を考えやすくなります。人たらしな人の多くは、好かれようとしているのではなく、相手のことを知りたいと思っているのです。

印象ひとつで、人柄を決めない

ビッグファイブ診断は、外向性や協調性を含む五つの傾向を振り返る道具です。だれかが人たらしかどうかを判定する検査ではありません。

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参考にした研究

  • Huang K, Yeomans M, Brooks AW, Minson J, Gino F(2017)It doesn't hurt to ask: Question-asking increases liking. Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 430–452. DOI
  • Collins NL, Miller LC(1994)Self-disclosure and liking: A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 116(3), 457–475. DOI
  • Gordon RA(1996)Impact of ingratiation on judgments and evaluations: A meta-analytic investigation. Journal of Personality and Social Psychology, 71(1), 54–70. DOI