人を褒めない人に、よくある場面
部下が資料を仕上げても、「次は期限を守って」としか言わない。家族が夕食を作っても、「ごちそうさま」だけで感想がない。そばで見ていると、「少しくらい認めてくれてもいいのに」と感じる場面です。
人を褒めない人の特徴としてよく挙がるのは、良いところに気づいても口に出さない、できて当たり前と考える、指摘は早いのに感想は言わない、といったものです。
褒められたときに素直に受け取れない場合は褒められると否定してしまう人の心理で、お礼の言葉が出ない場合はありがとうが言えない人の心理で取り上げました。この記事では、相手の良いところを見ていても、褒める言葉にしない人の心の中を考えます。
「言ったら迷惑かも」と、ひとりで思い込んでいる場合がある。
一つの口ぐせで、性格は決まりません。ビッグファイブ診断では、複数の質問への回答から、人との関わり方や気持ちの動き方を振り返れます。
自分の五つの性格を測る(無料)褒め言葉の「うれしさ」は、小さく見積もられている
BoothbyとBohnsは、人が褒め言葉を伝えたときの相手の気持ちを予想してもらい、実際に褒められた人の気持ちと比べました。その結果、褒める側は相手の喜びを実際より小さく見積もり、相手が気まずく感じることを実際より大きく見積もっていました。[1]
理由の一つは、見ている点がずれていることです。褒める側は「うまく言えるだろうか」と自分の言い方の出来を気にします。ところが褒められた側は、言い方の上手さより、自分に向けた温かい気持ちを受け取っています。[1]
つまり、褒めない人の多くは、褒める気持ちがないのではなく、伝えても喜ばれないだろう、気まずくさせるだろうと、ひとりで予想している可能性があります。
感謝や好意を伝えるのが苦手なのは、人間に共通の傾向
KumarとEpleyは、世話になった人への感謝の手紙を書いてもらう実験をしました。書いた人は、手紙を受け取った人がどれほど驚き、喜ぶかを実際より低く見積もり、気まずさを実際より高く見積もっていました。[2]
ここでも原因は同じで、書く側は文章の出来を気にし、受け取る側は温かい気持ちを喜んでいました。[2]褒めることも感謝を伝えることも、「相手は思っているより喜ぶ」のに、「気まずくなりそう」と思って引っ込めてしまいやすい行動なのです。
ビッグファイブで見ると、人との関係で言葉を控えやすい人は、気持ちを外に出す度合い(外向性)がやや低かったり、相手にどう思われるかを気にする感受性が高かったりします。ただし、褒めないことが、これらの性格から直接決まるわけではありません。育った環境や職場の習慣、これまで褒めて気まずくなった経験も関わります。
褒めない理由は、一つではない
1. 気まずさを避けている:照れくささや、わざとらしいと思われる心配から、言葉を飲み込んでいます。
2. できて当たり前と考えている:自分にも同じ水準を求めていて、基準を満たしたことは褒める対象と考えていません。
3. 褒め方がわからない:「すごい」以外の言葉が思いつかず、どう褒めればよいか迷っています。
4. 褒めると相手が慢心すると思っている:厳しさが成長につながるという信念を持っています。
同じ「褒めない」でも、背景は大きく違います。たとえば、気まずさを避けているだけの人には、褒めても大丈夫だと実感してもらうことが助けになりますし、基準が高い人には、小さな進歩も認めてよいと知ってもらうことが役に立ちます。本人に悪意があるとは限らないので、決めつけずに、まず何が理由なのかを見ていくと対処しやすくなります。
褒めない人との付き合い方、自分が褒めない場合
褒めない相手と付き合うときは、褒め言葉を期待しすぎないことが、自分を守る一つの方法です。無反応でも、評価が低いとは限りません。「この資料、どこが良かったですか」と具体的に聞くと、言葉にしてもらいやすくなります。
自分が褒めない側だと感じる人は、次の二つを試してみてください。一つは、気づいたことを一言だけ口にすること。「その色、いいね」「助かった」で十分です。上手に言おうとするほど迷うので、短くてかまいません。もう一つは、褒める中身に気をつけることです。
MuellerとDweckは、子どもに課題の結果を褒める実験で、「頭がいいね」と能力を褒められた子は難しい課題を避けやすく、失敗のあとに成績が下がった一方、「がんばったね」と努力を褒められた子は難しい課題に挑戦しやすかったことを報告しています。[3]褒めるなら、能力より、努力やくふうした点に触れるほうが、相手の力になりやすいのです。
職場で褒める習慣をつくりたいときは、「朝礼で一人ひとつ、昨日助かったことを伝える」のように、仕組みにしてしまうのも一つの方法です。気分や性格に頼らず決まった時間に言葉にすれば、照れくささが減り、褒められた側も次の仕事に前向きに向かいやすくなります。
「褒めない人」と決めつけない
褒めない人の中には、言葉は少なくても、行動で気持ちを示している人がいます。黙って仕事を任せる、困ったときに手を貸す、といったことです。言葉でも行動でも気持ちが全く見えず、人間関係に強い負担を感じる場合は、ひとりで抱え込まず、信頼できる人や相談窓口に話してみてください。
褒めない理由の多くは、冷たさではなく、思い込みと不慣れです。相手の喜びは、思っているより大きい。そう知っているだけで、一言を口にする勇気が少し出てきます。
口ぐせひとつで、人柄を決めない
ビッグファイブ診断は、外向性や協調性を含む五つの傾向を振り返る道具です。相手が褒めない理由を判定する検査ではありません。
人を褒めない人と、どうしても合わないと感じるなら。まず自分の性格を診断し、そのあと「あの人診断」で相手の様子を答えると、ふたりの性格のどこがぶつかりやすいのか、どう付き合えば楽になるかが分かります。
なぜあの人と合わないのかを知る(無料・登録不要)参考にした研究
- Boothby EJ, Bohns VK(2021)Why a simple act of kindness is not as simple as it seems: Underestimating the positive impact of our compliments on others. Personality and Social Psychology Bulletin, 47(5), 826–840. DOI
- Kumar A, Epley N(2018)Undervaluing gratitude: Expressers misunderstand the consequences of showing appreciation. Psychological Science, 29(7), 1134–1144. DOI
- Mueller CM, Dweck CS(1998)Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52. DOI