面白い人は、よくしゃべる人とは限らない

同じ出来事を話しているのに、あの人の話だとつい笑ってしまう。大勢の前で場を盛り上げる人もいれば、静かに一言だけ添えて、隣の人を笑わせる人もいます。「面白い人」の魅力は、声の大きさや話す量だけでは説明できません。

日常で思い浮かぶ特徴は、身近な出来事の意外なところに気づく、たとえ方に工夫がある、相手の反応を見ながら話すといったものです。ただし、これは面白い人を判定するチェック項目ではありません。何に笑うかは、好みや親しさ、その日の気分でも変わります。

冗談が通じない人の心理では、受け取る側が笑えない理由を扱いました。ここでは、笑いを生む側のふるまいに目を向けます。好かれる会話全般を扱う人たらしな人の心理とも分けて、ユーモアの使い方を考えます。

何人を笑わせたかだけでなく、
その笑いに、誰が安心して加われたか。

面白さだけで、人柄は決まりません。ビッグファイブ診断では、外向性や協調性など、人との関わり方を五つの面から振り返れます。

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ユーモアには四つの使い方がある

Martinたちは、ふだんのユーモアの使い方を四つに分ける質問票を開発しました。笑わせる技術の高さではなく、笑いを何のために、誰に向けて使うかを見る考え方です。[1]

仲良くなる笑い:一緒に楽しめる話で、人との距離を縮める。

自分を支える笑い:大変な出来事にも、おかしみを見つけて受け止め直す。

人を下げる笑い:皮肉やからかいで、相手を低く扱う。

自分を犠牲にする笑い:受け入れてもらうために、自分を必要以上におとしめる。

この四つは、人をどれか一種類に分ける箱ではありません。同じ人でも、相手や場面によって使い方が変わります。また、小さな失敗を笑って話すことが、すべて「自分を犠牲にする笑い」なのではありません。本人が無理をしていないかという違いがあります。

面白い人の性格は、外向性だけではない

Plessenたちは、ユーモアの使い方とビッグファイブの関係を調べた24研究、計11,791人のデータをまとめました。仲良くなる笑いと自分を支える笑いは、平均すると外向性・協調性・誠実性・開放性の高さ、神経症傾向の低さと関連していました。[2]

外向性は人との交流、協調性は他者への配慮、開放性は新しい考えや経験への関心に関わる特性です。面白さを考えるときも、「明るく積極的か」だけに絞らず、いくつかの面から見る余地があります。

ただし、この結果は集団で見た関連です。外向的なら必ず面白い、静かな人にはユーモアがない、という意味ではありません。研究が測ったのも、日常で笑いをどう使うかであり、全員の冗談を審査した成績ではありません。面白い話が一つできたことから、知能や性格全体を推定するのも飛躍です。

一方的に笑わせるより、一緒に笑えること

KurtzとAlgoeは、異性カップル71組が出会いを振り返る会話を撮影し、笑い方を調べました。二人が同時に笑っていた時間の割合は、関係の良さ、親しさ、相手に支えられている感覚と関連していました。[3]

これは「笑えば関係が良くなる」と証明した実験ではありません。仲が良いから笑いが重なる可能性もあり、恋人同士の結果をそのまま職場や初対面に当てはめることもできません。それでも、誰か一人の話術だけでなく、二人の間で起きていることに目を向けるきっかけになります。

日常で試すなら、うまいオチを次々に足すより、相手も知っている出来事を選んでみましょう。相手が話し始めたら、自分の話に戻さず聞く。笑わなかったら解説を重ねず、別の話に移る。こうした工夫はこの記事からの提案であり、この研究が一つずつ効果を確かめた方法ではありません。

「面白い」と「傷つけてもいい」は別

周りが笑っていても、話題にされた人まで楽しんでいるとは限りません。「冗談だから」「みんな笑っていたから」と言われると、嫌だった人が言い出せなくなることがあります。とくに立場の差がある場では、笑顔だけを同意の証拠にしないほうがよいでしょう。

実用上の目安は、相手がやめてほしいと言ったときに、その場でやめられるかです。容姿や家庭の事情など、本人が変えにくいことを繰り返し話題にしない。「そんなつもりじゃなかった」と意図を説明する前に、「嫌だったね、ごめん」と受け止めることはできます。

自分がいつも笑われ役なら、毎回その役を引き受けなくても大丈夫です。「その話は今日はやめよう」と短く伝えても構いません。面白い人でいるために、自分や誰かが我慢を続ける必要はありません。

面白い人になりたいときの小さな工夫

まずは、今日あった小さな意外さを一つ覚えておきましょう。「早く着きすぎて、お店より先に開店を待っていた」のように、誰かを下げなくても話題は作れます。大げさに演じず、短く話して相手の反応を待つところからで十分です。

相手の話をよく聞いて、その人が面白がったところに一言添える方法もあります。知らない人の内輪話を長く続けるより、いま目の前で共有できることを選ぶと、置いていかれる人を減らせます。これは万能の話術ではなく、会話を一緒に楽しむための工夫です。

笑いが起きなかった日を、性格の失敗として数えないでください。相手が疲れていることも、ただ好みが違うこともあります。いつでも面白いことを言える人を目指すより、笑うときも笑わないときも安心して話せる人を目指してみる。静かな聞き役にも、その人らしい魅力があります。

面白さの点数ではなく、自分の傾向を知る

ビッグファイブ診断は五つの性格傾向を振り返る道具です。ユーモアの才能や、面白い人かどうかを判定する検査ではありません。

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参考にした研究

  • Martin RA, Puhlik-Doris P, Larsen G, Gray J, Weir K(2003)Individual differences in uses of humor and their relation to psychological well-being: Development of the Humor Styles Questionnaire. Journal of Research in Personality, 37(1), 48–75. DOI
  • Plessen CY ほか(2020)Humor styles and personality: A systematic review and meta-analysis on the relations between humor styles and the Big Five personality traits. Personality and Individual Differences, 154, 109676. DOI
  • Kurtz LE, Algoe SB(2015)Putting laughter in context: Shared laughter as behavioral indicator of relationship well-being. Personal Relationships, 22(4), 573–590. DOI