マーケティングって、実際に何をしている仕事なのか
マーケティングと聞いて何を思い浮かべるか。「SNSでバズる投稿を作る人」「テレビCMを考える人」「データを見ている人」。どれもマーケティングの一部だが、全部ではない。
マーケティングの仕事を一言で言うなら、「商品が売れる仕組みを作ること」だ。商品そのものを作るのは企画・開発で、売るのは営業。マーケティングはその間にある。「誰に、どう伝えれば、買いたくなるのか」を設計する役割だ。
日本の企業でマーケティングと呼ばれる職種は、会社によって担当範囲が大きく違う。大企業ではマーケティング部門が独立していて、ブランド戦略、広告運用、イベント企画、市場調査などを専門に担当する。中小企業では、マーケティング担当者が企画も営業支援もSNS運用も兼務することがある。「マーケティング」という肩書きでも、実態は会社によってかなり違う。
1日の仕事の流れは担当領域によって違うが、共通する要素を挙げてみる。
データ分析はマーケティングの基盤だ。Webサイトのアクセス数、広告のクリック率、SNSのエンゲージメント、顧客の購買データ。これらの数字を毎日確認し、「何が起きているのか」を読み取る。先週のキャンペーンの効果はどうだったか。どのチャネルから一番コンバージョンが来ているか。数字を元に次の手を考える。マーケティングは「感覚」ではなく「データ」で動く仕事だ。
施策の企画と実行がある。データ分析をもとに、「では次に何をするか」を考える。新しくSNSキャンペーンを打つ、広告の出稿先を変える、メールマガジンをリニューアルする。施策を企画したら、実際に手を動かして実行する。広告のクリエイティブを発注する、SNSの投稿スケジュールを組む、LP(ランディングページ)の構成を考える。企画だけでなく実務も担当することが多い。
効果測定と改善が次に来る。実行した施策の結果を測定し、うまくいったところとそうでないところを分析する。そして改善案を出す。このPDCA(計画→実行→測定→改善)を高速で回すのがマーケティング職の日常だ。
見落とされがちだが、社内調整の比重も大きい。営業部門からの「もっとこういうリードが欲しい」、企画部門からの「新商品のプロモーションをお願い」、経営陣からの「もっと売上を上げて」。さまざまな部署からの要望を受け止め、優先順位をつけ、リソースを配分する。マーケティングは他部署の要望を一身に受けるポジションでもある。
日本のマーケティング職の年収は、企業規模や業界によって幅があるが、おおむね400〜700万円程度。デジタルマーケティングのスキルを持つ人材は需要が高く、特にWeb広告運用やデータ分析ができる人は市場価値が上がっている。外資系企業やIT企業では800万円を超えることもある。
マーケティングの特徴は、成果が比較的短期間で測定できることだ。広告を出して1週間で結果がわかる。SNSの投稿は即座に反応が来る。企画職や研究職のように成果が出るまで何年もかかる仕事と違い、フィードバックのサイクルが速い。この速さが向いている人には心地よく、向いていない人にはプレッシャーになる。
ビッグファイブで見るマーケティングに向いている性格
マーケティングに向いている人を「センスがある人」「アイデアマン」と片付けるのは簡単だ。でも実際は、データと向き合う力と、仮説を立てて検証する力が中心にある。ビッグファイブの5つの因子が、マーケティングのプロセスのどの部分に影響しているのかを整理する。
開放性が高い人:データの先にある「次の一手」を見つける
開放性が高い人は、数字の裏にある意味を読み取るのが得意だ。アクセスデータの変化を見て「これはもしかすると〇〇のトレンドと関係しているかもしれない」と仮説を立てる。競合の施策を見て「あれを自社の文脈でやったらどうなるか」と想像する。データは誰でも見られるが、その先にある「だからどうするのか」の答えを出すには、知識や経験を結びつける柔軟な思考が必要だ。開放性の高さはこの部分に直結する。
また、マーケティングの世界は常に変化している。新しいプラットフォーム、新しい広告フォーマット、消費者の行動の変化。開放性が高い人は、こうした変化を「面倒」ではなく「面白い」と感じられる。変化に対応し、新しい手法を試す抵抗感が少ない。
誠実性が高い人:PDCAを確実に回す
マーケティングは「一度やって終わり」ではなく、継続的な改善の積み重ねだ。今日の広告の数字を確認する、昨日のSNS投稿の反応を分析する、今週の施策のレポートを書く。これらを毎日確実に行うのが誠実性の高さだ。
PDCAを回す力は、マーケティングにおいて最も地味だが最も重要なスキルの一つだ。一度の派手なキャンペーンよりも、毎日のコツコツとした改善の積み重ねが成果を生む。誠実性が高い人は、この地道な作業を確実にこなす。広告予算の管理、スケジュールの厳守、レポートの提出期限。これらがおろそかになると、マーケティングの効果測定ができなくなる。
外向性が中程度以上の人:社内を動かし、市場と対話する
マーケティングは社内調整の多い仕事だ。営業、企画、デザイン、外部の広告代理店。さまざまな関係者とコミュニケーションを取る必要がある。外向性が中程度以上ある人は、他部署に積極的に声をかけ、意見を聞き、合意を形成するのが苦にならない。
また、マーケティングの本質は「市場との対話」だ。消費者が何を考え、何を求めているのかを知るためには、時には現場に出て直接話を聞くこともある。展示会での顧客インタビュー、店舗での購買行動の観察。こうした活動にエネルギーを使えるのは外向性の高さだ。
協調性が中程度の人:要望を聞きつつ軸を保つ
マーケティングは他部署からの要望が集中するポジションだ。営業からの「もっとリードが欲しい」、企画からの「この商品のプロモーションを」、経営陣からの「もっと売上を」。これらの要望を聞き入れつつ、優先順位をつけ、限られたリソースで最大の効果を出す配分を決める。協調性があまりに低いと他部署との関係が悪くなり、あまりに高いと全ての要望に応えようとしてリソースが散ってしまう。
神経症傾向が低めの人:数字の上下に振り回されない
マーケティングは数字が毎日変動する世界だ。昨日の広告のコンバージョン率が下がった、先週のキャンペーンの反応が今ひとつだった。こうした数字の上下に一喜一憂していると、精神的に持たない。神経症傾向が低めの人は、数字の悪い時も「要因を分析して次に活かそう」と切り替えやすい。短期的な数字の変動と、中長期的な施策の方向性を分けて考えられる。
この記事の話は、性格の5つの因子(ビッグファイブ)で読み解けます。自分の傾向は5分で測れます。
ビッグファイブ診断を受ける(無料・登録不要)向いていない人が陥りやすいパターン
マーケティング職に向いていない人が入ってから気づくパターンをいくつか見ていく。
開放性が低くて、変化への対応が苦手なパターン
マーケティングの世界は、半年前の「正解」が今日の「間違い」になることがある。SNSのアルゴリズムが変わる、新しいプラットフォームが台頭する、消費者の嗜好がシフトする。こうした変化に対応し続けることが、開放性が低い人には負荷になる。「やり方が変わるのが嫌だ」「前のやり方の方が良かった」と過去の手法に固執してしまう。
このタイプは、ルールが決まっている作業や手順が確立している仕事では安定したパフォーマンスを出す。マーケティングの中でも、運用型広告の入札調整やレポート作成など、手順化された作業には対応できる。ただ、戦略を立てる部分や新しいチャネルに挑戦する部分で行き詰まる。
誠実性が低くて、PDCAが回らないパターン
施策のアイデアは出る。面白いキャンペーンも思いつく。でも、実行した後の数字の確認が面倒で後回しになる。レポートの提出が遅れる。広告予算の管理が雑になる。結果として、何が効いて何が効かなかったのかがわからない状態になり、次の施策の精度が上がらない。
マーケティングは「やって終わり」ではなく「やって測って直す」のが本質だ。測る作業と直す作業を怠ると、同じ失敗を繰り返すことになる。誠実性の低さは、マーケティングの一番大事なサイクルを止めてしまう。
神経症傾向が高くて、数字の変動に敏感すぎるパターン
マーケティングの数字は毎日変動する。それは正常だ。曜日による違い、季節による違い、たまたまのノイズ。でも神経症傾向が高いと、「今日のコンバージョンが昨日より下がった」という日常的な変動を「施策が失敗した」「自分のせいだ」と受け取ってしまう。その結果、短期的な数字の変動に過剰に反応して施策を頻繁に変えてしまい、一つの施策を十分に検証する前に次の手に移ってしまう。
マーケティングは「十分なデータが溜まってから判断する」ことが原則だ。1日や2日の数字で施策の良し悪しを判断すると、誤った結論に達する。神経症傾向が高い人は、数字の変動と自分の評価を切り離す練習が必要だ。
性格を踏まえたキャリアの考え方
マーケティングに向いていないと感じたからといって、「データが読めない」とか「センスがない」ということではない。マーケティングが求める環境と、自分の性格の傾向が合っていないだけだ。自分に合った形で力を発揮できる環境を探す方向で考える。
マーケティングの要素を分解して考える
「マーケティングが合わない」と思った時、何が合わないのかを分解してみる。数字を毎日見るのが苦痛なのか、変化の速さについていけないのか、社内調整がしんどいのか、SNSの運用が嫌なのか。マーケティングの中にも、データ分析に特化したポジション、SNS運用に特化したポジション、ブランド戦略を考えるポジションがある。すべてが「全方位型マーケター」というわけではない。
データ分析を活かす別の道
マーケティングでデータ分析の経験を積んだ人は、データ分析・AIの職種でもその力を活かせる。マーケティングのデータ分析は「売上につなげる」ための分析だが、データ分析職は「データから意味のあるパターンを見つける」ことに集中できる。社内調整の比重が少なく、データと向き合う時間が多い。
開放性を活かす別の道
消費者の心理や行動に関心があるなら、リサーチャーやUXリサーチャーという選択肢もある。マーケティングのように「売る」ための調査ではなく、「理解する」ための調査に集中できる。市場の変化に対応する速さよりも、深く観察する丁寧さが求められる。
自分の因子スコアを知る意義
マーケティングに向いているかを知る上で、ビッグファイブの因子スコアは一つの材料になる。「開放性が高いから新しい手法に対応しやすい」「神経症傾向が高いから数字の変動に敏感になりすぎるかもしれない」。こういう読み取りが、自分のスコアを知っていればできる。スコアは傾向であって決定ではない。自分の傾向を知った上で、どういう環境でなら力を発揮できるかを考える材料として活用してほしい。