声の大きさは、外向性と結びついている

まず、当たっている説明から。声の大きさと外向性のあいだには、たしかに関係がある。

ドイツで、7歳から14歳の子ども871人の話し声を測った研究がある。声変わり前の子どもに、いちばん小さい声ふだんの会話の声発表するときの声叫び声の四段階で話してもらい、それぞれの音の強さを記録した。性格は親が質問票で答えている。

結果、外向性が高い子ほど、声が大きかった。ふだんの会話の声で、はっきりした正の関係が出ている。反対に、情緒が安定している子誠実性が高い子は、叫び声の場面で声が控えめだった。落ち着いている子、きちんとしている子は、大きな声を出せる場面でも出しきらない。

ただし、ここで数字の大きさも一緒に見ておきたい。外向性と会話の声の強さの関係は、統計では「小さい」に分類される程度だった。声の大きさの大半は、性格以外のもので決まっている。外向性は、その上に少しだけ上乗せする。

「声が大きい人は外向的」は、傾向としては当たり。ただし、その人の性格を言い当てる材料としては弱い

集団で見れば右上がりの線は引ける。しかし目の前の一人について「この人は外向的だ」と決めるには、線の周りのばらつきが大きすぎる。

聞き手は、大きな声から「外向的」を読み取っている

ところが、聞いている側の頭の中では、この関係がずっと強く働いている。

古い研究だが、いまも引かれ続けているものがある。アメリカの男性24人に模擬裁判の評議をしてもらい、その録音だけを聞いた第三者に性格を推測させた。本人の性格は、その人をよく知る仲間の評価で押さえてある。声から読み取った推測が、仲間の評価とどれくらい合うかを調べたわけだ。

結果、ビッグファイブの中で外向性だけが、声からの推測と本人の評価が一致した。他の性格は、声を聞いてもほとんど当たらなかった。そして推測の手がかりになっていたのは、声の張り音量の幅——つまり、大きくて、よく響く声だった。

ここまでなら「聞き手はちゃんと読めている」という話で終わる。だが2023年に韓国で行われた研究は、その読み取りに思い込みが混じることも示している。接客の場面を想定して自然な発話を集め、聞き手にビッグファイブを推測させたところ、女性の声については、体が大きく聞こえる声の響きだけで外向性と開放性が高く見積もられていた。声の主が実際にそうかどうかとは別に、聞き手の側に「こういう声の人はこういう性格」という型がある。

声の大きさは性格を少しだけ映す。聞き手はそれを大きく読みすぎる。

だから「声が大きい人」は、実際の外向性より外向的に見られ、実際の自信より自信があるように見られ、場合によっては実際より押しが強い人に見られる。本人が知らないところで、性格の見積もりが上乗せされている。

この記事の話は、ビッグファイブでいう「外向性」と関わりがあります。自分の外向性がどのくらいかは、5分で測れます。声の大きさから想像されている姿と、測った結果がどれくらい違うかを見るのも面白いところです。

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声は、性格より先に場面で大きくなる

性格の話を一度離れる。声の大きさをいちばん動かしているのは、その場の条件だ。

フランスの研究で、18歳から52歳の女性41人に、相手へ体の姿勢を指示するゲームをしてもらった。最初は何の障害もない状態。次に、相手との距離を離す。さらに、他の参加者と競わせて時間の圧力をかける。そのたびに声の強さを測った。

声は、条件を足すごとにはっきり大きくなった。平均で75.5デシベルから81.8デシベルへ。6デシベルは、耳で聞くと「だいぶ大きくなった」と感じる差だ。声の高さも一緒に上がっていた。そして、この変化の大きさは、性格とはまったく関係がなかった。外向的な人が特に大きくなるわけでも、神経質な人が特に上ずるわけでもない。距離と焦りが、誰の声も同じように押し上げていた。

身近な「声が大きい人」を思い浮かべてみると、たいてい場面の条件が揃っている。騒がしい店で話している。相手が離れた席にいる。話が盛り上がって、早口になっている。仕事で急かされている。こうした条件は、本人の性格とは無関係に声を大きくする。

もう一つ、見落とされやすい条件がある。自分の耳だ。人は自分の声を、自分の耳で聞きながら調節している。周りの音が大きいときや、自分の聞こえが少し鈍っているときは、聞こえる自分の声が小さくなるので、無意識に声を上げる。本人には「ふつうの声」に聞こえている。

育った環境も効く。大家族、賑やかな職場、外で遊ぶ時間が長かった子ども時代。声を張らないと通らない場所で長く過ごした人は、その音量が「ふつう」として体に残る。これは性格ではなく、習慣だ。

大きな声の人が、払っているもの

声が大きいことは、当人にとって得なのか損なのか。研究は、両方の面を拾っている。

アメリカの小中学校の教員73人を調べた2024年の研究では、外向性が高い人ほど、声の疲れを訴えにくかった。協調性が高い人も同じだった。声を使うことが苦にならない人は、声をたくさん使う職業でも消耗しにくい。これは有利な面だ。

ただし同じ研究は、それまでの知見として、外向的な人は声の使いすぎによる不調——声帯の炎症や結節——と結びつけられてきたことも記している。疲れを感じにくいぶん、限界まで使ってしまう。声が大きく、よくしゃべる人ほど、喉のほうが先に音を上げる。

対人の面では、前の節で見たとおり、実際より外向的で押しの強い人に見積もられる。会議で発言すると「主張が強い」と受け取られ、雑談では「うるさい」と思われる。本人は同じ熱量で話しているだけなのに、周りの側で評価が一段ずれる。声が大きい人が「なぜか敬遠される」と感じるとき、原因は話の中身ではなく、音量が引き起こした性格の見積もりのほうにあることが多い。

逆に、声の大きさで性格を判定するのはやめたほうがいい。2023年に成人119人の声を細かく解析した研究では、外向性と声の音響的な特徴のあいだに、意味のある関係は見つからなかった。子どもの研究で見えた小さな関係は、大人になると場面や習慣に埋もれて、声だけからはほとんど取り出せなくなる。声は性格の窓ではなく、せいぜい曇りガラスだ。

気になるときに、どこを見るか

自分の声の大きさが気になっている人へ。「小さく話す練習」は、あまり筋がよくない。声の大きさは場面で決まる部分が大きいので、意識で下げても、場面が変われば元に戻る。

効くのは場面を見ることだ。自分の声が大きくなるのは、どこで、誰と、どんなときか。騒がしい店か、相手が遠いときか、話が乗ってきたときか。それが分かれば、声を抑えるのではなく、席を替える、近づく、ひと呼吸おくという別の手が打てる。音量は結果であって、原因はその手前にある。

もう一つ、相手の反応を材料にする。声が大きい人は、実際より押しが強く見積もられている。それを知っているだけで、「主張したいわけではなくて」と一言足せる。性格の見積もりのずれは、言葉で埋められる。

周りの人へ。「声が大きい」と本人に言うのは、たいてい効かないうえに、相手を萎縮させる。本人には自分の声がふつうに聞こえているからだ。効くのは環境を変えることで、静かな席に移る、距離を詰める、一対一で話す、で足りる。声は場面に付いてくる。

そして、声の大きさから性格を読むのをやめる。大きな声で話す人が、実は慎重で、人の目をよく気にしていることは珍しくない。外向性を知りたいなら、声ではなく、その人が休みの日に何をしているかを聞いたほうが早い。

ここから先は、性格の話ではなくなる

声の大きさがある時期から急に変わったときは、性格の話として扱わないほうがいい。前の節で書いたとおり、人は自分の耳で自分の声を調節している。聞こえが落ちてくると、本人は気づかないまま声が大きくなる。周りから「最近、声が大きくなった」「テレビの音が大きい」と言われることが増えたら、性格ではなく耳の話かもしれない。

目安は変化だ。昔からそうなのか、最近そうなったのか。後者なら、診断の範囲外なので、耳鼻科で聴力を調べてもらうのが早い。

自分の外向性を、声ではなく測ってみる

声の大きさは、外向性を少しだけ映し、周りはそれを大きく読みます。周りに見積もられている自分と、測った自分がどれくらい違うか。その差を知っておくと、誤解を先回りして埋められます。

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参考にした研究

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