なぜSNSの使い方は人によってこんなに違うのか
毎日投稿して何百件ものいいねをもらう人がいる一方で、アカウントを持っていても月に一度も開かない人がいる。同じSNSを使っているのに、この差はどこから来るのだろうか。
「意志の問題」でも「センスの問題」でもない。性格心理学の研究は、SNSの使い方が性格特性と深く結びついていることを繰り返し示している。
テキサス大学のCorreaらが2010年に行った調査では、外向性が高い人ほどSNSの利用頻度が高く、神経症傾向が高い人ほど感情表現のためにSNSを使う傾向があることが確認された。投稿の頻度、使うプラットフォーム、何を投稿するか、疲れやすいかどうか‥‥これらはすべて、その人の性格が反映されている。
つまり「SNSが向いているか向いていないか」という問いは、ざっくりした話ではなく、自分の因子プロフィールを見れば、ある程度の答えが出る。
このことはSNSに疲れている人にとっても、もっとうまく使いたい人にとっても、役に立つ視点になる。「なぜ自分はSNSが続かないのか」「なぜあの人は平気で毎日投稿できるのか」という問いに、性格の側面から答えていく。
5因子別・SNSの使い方の傾向
外向性が高い人
外向性が高い人にとって、SNSは「もう一つの社交場」として機能する。投稿してリアクションをもらうことがエネルギー補給になるため、継続的な発信が苦にならない。自己開示の敷居が低く、日常の出来事や気持ちを自然に言語化できる。フォロワー数や交流の広さが、リアルな人間関係の拡張として機能する。
外向性が低い人は、投稿そのものに消耗感を覚えやすい。「これを発信していいのか」という検閲が強くはたらくため、下書きが増えて結局投稿しないことも多い。見るだけ、あるいは限られた相手とだけやり取りするスタイルが自然な使い方になる。
神経症傾向が高い人
神経症傾向が高い人はSNSを感情の吐き口として使う傾向がある。悩みや不安を投稿することで心理的な負荷を軽減しようとする動きが見られる。一方で、他人の投稿との比較によって気分が落ち込みやすい。「みんな楽しそうなのに自分は」という感覚がSNS上で増幅しやすく、ノルウェーの研究者Andreasenらの調査でも神経症傾向の高さとSNS依存の強さに相関が見られた。
神経症傾向が低い人はSNSに振り回されにくい。通知を気にせず、他人の近況を見ても自分の感情が大きく動かない。適度な距離感を自然に保てる。
開放性が高い人
知的好奇心や審美的な感受性の高い人は、SNSをインプットの場として活用する。フォロー先はニッチな専門分野や海外のクリエイター、哲学・科学・アート系のアカウントになりやすい。自分でも考察や感想を発信することに意欲があり、ハッシュタグよりも文脈のある投稿を好む。
開放性が低い人は、身近で実用的なコンテンツに引き寄せられる。日常的なライフスタイル、グルメ、地域の情報など、生活に密着した使い方になる。新しいプラットフォームへの移行は遅め。
誠実性が高い人
計画的で自己管理能力が高い人は、SNSの使い方も管理的になる。投稿前に内容を見直し、伝わり方を考えてから発信する。ただし「SNSに時間を使いすぎている」と感じると利用を急に減らすことがある。ルールを設けて使う人も多い。
誠実性が低い人は衝動的な投稿が多くなりやすい。思ったことをそのまま発信できる反面、後で削除するケースも出てくる。継続的な発信よりも、思いついた時だけ投稿するスタイルが多い。
協調性が高い人
他者への共感度が高い人は、SNSを交流の場として大切にする。コメントへの返信が丁寧で、批判的なコンテンツや炎上案件を避けて通る傾向がある。いいねを気軽に押せるため、フォロワーからの印象は良くなりやすい。ただし、無理に共感しようとして消耗するケースもある。
協調性が低い人は自分のペースを優先する。共感よりも意見交換を好み、議論のある投稿に引き込まれやすい。好き嫌いがはっきりしているため、フォロー先が偏る傾向がある。
5因子は独立して機能するのではなく、組み合わせとして現れる。「外向性が高く神経症傾向も高い」人は発信意欲が強い一方でリアクションに過敏になりやすく、「開放性が高く外向性が低い」人は深い発信はできるが継続が難しい、といった傾向が出てくる。自分のプロフィール全体で読むと、使い方の傾向がより正確に見えてくる。
この記事の話は、ビッグファイブでいう「外向性」と関わりがあります。自分の外向性がどのくらいかは、5分で測れます。
自分の外向性を測る(無料・登録不要)プラットフォーム × 性格の相性
SNSといっても、Instagram・X・TikTok・YouTubeでは使い方も雰囲気もまったく異なる。それぞれのプラットフォームに集まりやすい性格のパターンを整理する。
視覚的な美しさや日常の記録を中心にしたプラットフォームで、外向性と協調性が高い人に向いている組み合わせだ。他者の生活を眺めることも投稿することも、社交的な文脈で行われる。開放性が高い人はアートやファッション、旅などのクリエイティブな発信で強みが出る。
一方で神経症傾向が高い人には注意が必要なプラットフォームでもある。Fardouly & Vartanianの研究(2015年)では、Instagramの閲覧が外見に関する比較を引き起こしやすく、特に神経症傾向が高い人において自己評価の低下につながりやすいことが示された。
X(旧Twitter)
テキスト中心で意見の発信と議論が活発なこのプラットフォームは、開放性が高い人と相性がいい。抽象的なテーマや社会問題に関心を持ち、自分の考えを言語化することが苦でない人は、このプラットフォームで発言の場を見つけやすい。
外向性の中でも「自己主張」型の人はフォロワーが増えやすいが、協調性が低すぎると摩擦を起こしやすい。神経症傾向が高い人は通知やリプライに過剰反応しやすく、使い続けるうちに消耗するケースが多い。
TikTok
エンターテインメント性が高く、短尺で感覚的な反応を引き出すこのプラットフォームは、外向性が高く誠実性がそれほど高くない人が発信で強みを発揮しやすい。計画よりも直感と勢いで動ける人が、継続的な投稿を続けやすい。
開放性が高い人はトレンドから外れた独自のコンテンツを作る傾向があり、ニッチなファンを獲得することがある。内向的な人や神経症傾向が高い人は消費専用になりやすく、アルゴリズムによる連続表示で時間を失いやすいことも研究で指摘されている。
YouTube
動画の視聴と発信が主体で、長尺コンテンツが中心のこのプラットフォームは、開放性が高い人が学習やインプット目的で使うことが多い。内向的な人でも映像という媒体を通じて発信しやすく、リアルタイムの反応が求められないため外向性が低い人にも取り組みやすい面がある。
誠実性が高い人は計画的にチャンネル運営に取り組む傾向があり、長期的にコンテンツを積み上げていく作業スタイルに向いている。
「SNSで疲れる」「フォロワーが増えない」の性格的な理由
SNSをうまく使えていないと感じる時、それを「センスがない」「努力が足りない」と自分に帰属させることがある。だが多くの場合、その原因は性格特性と使い方のミスマッチにある。
神経症傾向が高い人が疲れる理由
通知、いいねの数、コメントの内容‥‥これらすべてが感情的な刺激になる。投稿後に「あの表現で良かったか」と気になり始め、反応が薄いと「嫌われたのか」と感じる。他人の投稿を見れば自分との差が気になる。神経症傾向が高い人にとってSNSは、外部からの感情刺激が絶え間なく流れ込んでくる環境であり、使えば使うほど消耗しやすい構造になっている。
外向性が低い人がフォロワーを増やしにくい理由
フォロワーが増えやすい発信スタイルは、頻度が高く、反応が早く、自己開示が多いことが多い。これらはすべて外向性が高い人が自然にやっていることで、外向性が低い人には一つひとつがコストになる。投稿すること自体にエネルギーを使うため、継続が難しくなる。「続けられない自分がおかしい」のではなく、そのプラットフォームの求める発信スタイルが自分の気質と合っていないというだけだ。
誠実性が高い人が投稿できない理由
「これは正確か」「誤解を招かないか」「言葉の選び方は適切か」‥‥誠実性が高い人は投稿前の検閲が細かくなる。下書きに時間をかけすぎて投稿しないまま終わるか、投稿しても「もっとうまく書けた」という後悔が残る。完成度への基準が高いために、SNSで求められるライトなテンポと合いにくい。
協調性が高い人が消耗する理由
協調性が高い人は他者の感情に敏感で、コメントやリプライへの返信に気を遣いすぎる。フォロワーが増えるほど「全員に誠実に対応しなければ」というプレッシャーが大きくなる。また批判的な意見を投稿することへの抵抗感が強いため、発言の幅が狭まりやすい。共感型の発信は支持されやすい反面、自分のリソースを削り続けることになりやすい。
性格はSNSの向き不向きを決めるが、使い方の工夫でそのギャップを小さくすることはできる。投稿頻度を下げる、通知をオフにする、プラットフォームを変える‥‥これらは「逃げ」ではなく、自分の性格に合わせた合理的な選択だ。まず自分がどの因子でどういう傾向を持っているかを知ることが、SNSとの付き合い方を変える最初の一歩になる。