ずるい人に、よくある場面

面倒な作業になると、いつの間にか席を外している。楽な役だけを先に取っていく。決まりは人に守らせるのに、自分は小さく抜け道を使う。ずるい人と一緒にいると、まじめにやっている自分のほうが損をしている気がして、もやもやが積もっていきます。

ずるい人の特徴としてよく挙がるのは、楽なところだけ取る、見られていないところで手を抜く、ばれない程度にごまかす、といったものです。

人の手柄を自分のものにする場合は手柄を横取りする人の心理で、都合のいいときだけ頼ってくる場合は人を利用する人の心理で取り上げました。この記事では、大きな嘘ではなく、日常の小さなずるさを考えます。

ずるい人の多くは、自分をずるいと思っていない。
「これくらいなら」の線が、人より少し甘いだけのことが多い。

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ずるさは「全部」より「少しだけ」が多い

FischbacherとFöllmi-Heusiは、出た目に応じてお金がもらえるサイコロの実験を行いました。サイコロは一人きりで振り、出た目は自己申告なので、嘘をついてもばれません。その結果、いちばん得をする目を申告した、つまり最大限に嘘をついた人は約2割で、正直に申告した人は約4割でした。[1]

注目したいのは、残りの人たちです。少しだけ高い目を申告する、いちばん得な嘘ではない、控えめな嘘をつく人が多くいました。ばれないとわかっていても、多くの人は思いきりごまかすことはしないのです。

日常のずるさも、これに近い形をしています。仕事を全部放り出すわけではない。少しだけ楽な役を選ぶ、少しだけ早く帰る、少しだけ数字をよく見せる。本人の中では「みんなやっている程度」「これくらいなら許される」という線の内側にあるので、悪いことをしている実感が薄いのです。周りから見ると、その「少し」が毎回同じ人に偏っていることが、ずるさとして目につきます。

まじめな人ほど、ずるさに強く反応する

FehrとGächterは、みんなでお金を出し合うと全員が得をする実験で、出さずに得だけを受け取る「ただ乗り」の人に、自分のお金を払ってでも罰を与えられるようにしました。すると、協力していた人の多くが、損をしてでもただ乗りの人を罰しようとし、協力からの外れ方が大きい人ほど重く罰していました。[2]論文では、人には「自分だけがばかを見る」ことを強く嫌う気持ちがある、と述べています。

ずるい人にいらいらするのは、心が狭いからではありません。みんなで回している仕組みを守ろうとする、ごく自然な反応です。ただし、その怒りをそのままぶつけると、場の空気が悪くなり、自分が損な役を引き受け続けることにもなりがちです。

性格との関係では、Heckらが16の研究、5,002人分のデータをまとめ直し、ばれない状況でのごまかしと性格の関係を調べています。ごまかしにはっきり関係していたのは「正直さ・謙虚さ」という特性で、ビッグファイブでは協調性だけに関係が見られましたが、正直さ・謙虚さを考えに入れると、それ以上の説明力はありませんでした。[3]ずるさは、外向的か内向的か、几帳面かどうかといった傾向とは、あまり結びついていないということです。

「正直さ・謙虚さ」は、ビッグファイブとは別の六つの特性で性格をとらえる考え方に含まれるもので、ずるをしてまで得をしたくない、自分を特別扱いしない傾向を指します。明るい人にも、おとなしい人にも、ずるい人とそうでない人がいる。見た目の印象や性格のタイプだけで、相手がずるいかどうかを見抜くことは難しいのです。

ずるい人への上手な対処法

1. 役割と量を、先に見える形にする:担当や順番を口約束にせず、表やメモで共有します。「誰が何をどれだけ」が見えると、楽な役だけを選ぶ余地が小さくなります。

2. 責めずに、事実で頼む:「ずるい」と言うと、相手は言い訳を探し始めます。「今週の片付けは三回とも私だったから、次はお願いできる?」と、回数や事実で伝えるほうが通りやすくなります。

3. 自分だけで埋め合わせない:ずるい人の分まで黙って引き受けると、その形が当たり前になります。困っているときは、上司や周りの人と分担の決め方そのものを見直すのも一つの方法です。

家族や友人の間では、細かく決めすぎると窮屈になります。それでも、毎回同じ人が損をしていると感じるなら、早めに一度だけ、落ち着いて話す機会をつくってください。

反対に、自分にもずるいところがあると感じる人は、「これくらいなら」と思った場面で、相手から同じことをされたらどう感じるかを一度だけ考えてみてください。

「ずるい性格」と決めつけない

実験が示すように、ばれない状況で少しごまかす人は珍しくありません。誰でも、疲れているときや、周りもそうしているように見えるときには、線が甘くなることがあります。一度のずるさだけで、相手の人柄すべてを決めつけないことも大切です。

ただし、注意しても同じことを繰り返す、こちらの損が大きくなっている、という場合は、無理に付き合い続ける必要はありません。距離を取ることも、自分を守る大切な選択です。

ずるさを止めるのは、責める言葉より、見える仕組みです。役割をはっきりさせ、事実で頼み、自分ひとりで抱え込まない。それが、まじめな人が損をし続けないための近道です。

ずるさひとつで、人柄を決めない

ビッグファイブ診断は、協調性や誠実性を含む五つの傾向を振り返る道具です。相手がずるいかどうかを判定する検査ではありません。

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参考にした研究

  • Fischbacher U, Föllmi-Heusi F(2013)Lies in disguise—An experimental study on cheating. Journal of the European Economic Association, 11(3), 525–547. DOI
  • Fehr E, Gächter S(2000)Cooperation and punishment in public goods experiments. American Economic Review, 90(4), 980–994. DOI
  • Heck DW, Thielmann I, Moshagen M, Hilbig BE(2018)Who lies? A large-scale reanalysis linking basic personality traits to unethical decision making. Judgment and Decision Making, 13(4), 356–371. DOI