趣味探しで、みんなが最初に間違えること

趣味を探すとき、たいていの人は「自分は何が好きか」から考える。ところが好きかどうかは、やってみるまでわからない。しかも数回やっただけでは、本当に好きなのか目新しいだけなのかも区別がつかない。だから探す旅は、なかなか終わらない。

続いた趣味と続かなかった趣味を並べてみると、中身よりも条件のほうがはっきり違う。一人でできたか、誰かと一緒だったか。毎回新しいことが起きたか、同じことの繰り返しだったか。疲れて帰った日でも手が伸びたか。心理学者のチクセントミハイは、技能と課題の難しさが釣り合ったところで人は時間を忘れる、と言った。大事なのは、その釣り合う場所が人によってまるで違うことだ。同じ登山でも、初めての山でなければ物足りない人と、いつもの裏山だから安心して歩ける人がいる。

ビッグファイブは、その心地よい条件を言葉にするための地図として使える。何が好きかまでは教えてくれない。けれど、どんな条件なら続きやすいかについては、かなりの手がかりをくれる。

開放性:新しさが燃料の人と、慣れが燃料の人

開放性は、新しい経験や抽象的な考え、美しいものへの反応のしやすさを表す因子だ。

開放性が高い人

絵を描く、文章を書く、曲を作る、外国語を学ぶ、行ったことのない街を歩く。こうした「まだ知らないものが残っている」趣味は燃料が切れにくい。逆に、決められた手順を毎回同じようにこなす趣味は、数回で色あせてしまう。

つまずきやすいのは、始めるのが得意すぎることだ。道具を買い、教則本を読み、最初の一週間で驚くほど進む。ところが次の興味が現れた瞬間、前のものが灰色に見える。押し入れに増えていくのは飽き性の証拠ではなく、新しさに反応しやすい特性がそのまま出た結果だ。対策は意志を強くすることではなく、作品を出す場所を先に決めてしまうことにある。月末に一枚だけ人に見せる、小さな展示に申し込む。締め切りを自分の外側に置くと、興味が薄れた時期をまたいで手が動く。

押し入れの道具は飽き性の証拠ではない。
新しさに反応しやすい性格が、そのまま形になっただけだ。

開放性が低い人

慣れ親しんだものを深めていくほうが心地よい人たちだ。同じ道を歩き、同じ作家を読み、同じ道具を長く使う。世間では新しい挑戦ばかりが褒められるが、飽きずに続けられるのは趣味においては相当な強みで、十年同じことをやってきた人の手つきは、それだけで価値になる。

この人が困るのは、趣味を探すという行為そのものだ。知らないジャンルを次々に試すのは、楽しいどころか消耗でしかない。だから探し方を変えたほうがいい。すでに生活の中で繰り返していることを、趣味に格上げするのだ。毎朝のコーヒー、休みの日の掃除、通勤路の散歩。道具を少し良くする、記録を残す、詳しくなる。それだけで趣味として成立する。

この記事の話は、ビッグファイブでいう「開放性」と関わりがあります。自分の開放性がどのくらいかは、5分で測れます。

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誠実性:積み上げが快感な人と、気分で動きたい人

誠実性は、計画性や自己管理、こつこつ積み上げる力に関わる因子で、趣味の続きやすさにいちばん直接的に影響する。

誠実性が高い人

記録が残り、上達が数字や形で見える趣味と相性がいい。筋トレ、楽器、模型、写真、資格の勉強、収集。昨日より少し進んだという感覚そのものが報酬になるので、他人に褒められなくても続く。落とし穴は、趣味が仕事に似てくることだ。週三回と決めたのに二回しかできなかった、今月は目標に届かなかった。そうやって自分を採点し始めると、楽しみが達成できていない項目に変わる。記録は取っていい。ただし、できなかった日を数えないことだ。

誠実性が低い人

準備に手間がかかる趣味は、まず続かない。道具を出して、着替えて、場所へ移動して、片付ける。この工程が多いほど、気分が乗った瞬間を逃す。思い立って五分で始められて、途中でやめても平気なものを選ぶといい。散歩、スマホで撮る写真、出しっぱなしの楽器、材料を切るだけの料理。

やりがちなのは、始める前に道具を一式そろえることだ。買った瞬間がいちばん満足度が高く、そこで熱が終わる。順番を逆にしたほうがいい。借りる、体験教室に行く、安いもので試す。三回続いてから、はじめて買う。

外向性:人といると充電される人、一人で充電する人

外向性は、人との関わりや刺激をどれくらい求めるかに関わる。ここを間違えると、内容がどれだけ好きでも続かない。

外向性が高い人は、同じことをするにも人がいるほうが持続する。チームスポーツ、サークル、イベント、対戦や協力のゲーム、誰かと行く旅。一人で完結する趣味を選んだときも、報告する相手がいれば続きやすい。写真を撮ったら誰かに見せる、走ったら記録を共有する。それだけで意味が変わる。

外向性が低い人は、一人の時間そのものが回復になる。読書、釣り、模型、絵、単独の山歩き。人が多い教室やサークルは、内容が好きでも消耗する。習い事を始めて数回で行かなくなるのは、趣味が合わなかったのではなく、場の設計が合わなかっただけということが多い。少人数の教室、オンラインの非同期のやり取り、黙々とやれる場を選べばいい。

古典的な説明では、外向的な人は刺激の少なさを退屈に感じやすく、内向的な人は同じ量の刺激を過剰に感じやすいとされてきた。今では単純化しすぎとの指摘もあるが、心地よい刺激の量に個人差があること自体は実感とよく合う。どちらが趣味に向いているという話ではない。

協調性と感受性:趣味に何を求めているか

残りの二つは、趣味の内容よりも、趣味に何を期待しているかに関わってくる。

協調性

協調性が高い人は、分かち合うところに喜びを感じやすい。誰かに贈る手芸、家族に作る料理、教える立場での活動、合奏や合唱。自分だけが得をする趣味より、誰かが喜ぶ形が入っているほうが長続きする。気をつけたいのは、相手に合わせているうちに自分の楽しみが消えることだ。誘ってくれた友人が辞めた途端に続けられなくなるなら、それは相手のための時間だったのかもしれない。自分ひとりでも成立する部分を少し残しておくと、趣味は生き延びる。

協調性が低めの人は、自分のペースを乱されないことを重視する。個人競技、単独の制作、分析や考察が中心の趣味。集団の空気に合わせる場面が多い趣味は、内容が好きでも負担が上回りやすい。

感受性(神経症傾向)

感受性が高い人にとって、趣味はしばしば回復の道具になる。そのとき決定的に大事なのは、評価されない場所であることだ。うまくなろうとした瞬間、趣味は新しい評価の場に変わってしまう。人前で発表する趣味や点数がつく趣味は、最初の入口としては重い。

体を動かす趣味が不安や落ち込みをやわらげることは、多くの研究で繰り返し確かめられている。ただし記録を競う運動である必要はない。散歩、園芸、サウナ、単純な手作業。頭の中の反すうが止まる時間さえ確保できれば、それで十分に機能する。

逆に感受性が低い人は、ストレスを逃がす必要が薄いぶん、趣味を面白さだけで選べる。ただ、惰性で続きやすい面もある。刺激を少しずつ上げるか、期限のある目標を置くと飽きにくい。

5因子でみる、趣味の早見表

ここまでを一枚にまとめる。当てはめて決めるためではなく、試す順番を決めるための表として使ってほしい。

因子 続きやすい条件 具体例 つまずきやすい点
開放性 高 毎回新しい発見がある/正解が決まっていない 創作・語学・旅・美術・実験的な料理 始めるのが得意すぎて、完成前に次へ移る
開放性 低 同じことを深められる/手順が決まっている 釣り・将棋・園芸・手入れ・収集 新しい趣味を探す作業そのものが苦痛
誠実性 高 記録が残る/上達が目に見える 筋トレ・楽器・模型・写真・学習 ノルマ化して、楽しみが義務に変わる
誠実性 低 五分で始められる/途中でやめても平気 散歩・スマホ写真・弾き流し・簡単な料理 道具を先に買い、買った時点で満足する
外向性 高 人と一緒/見せる相手がいる チーム競技・サークル・イベント・対戦 一人で完結する趣味だと熱が続かない
外向性 低 一人で完結する/静かにできる 読書・釣り・模型・絵・単独の山歩き 教室やサークルの場そのもので消耗する
協調性 高 誰かが喜ぶ形が入っている 贈る手芸・料理・教える活動・合奏 相手が辞めると自分も続けられなくなる
協調性 低 自分のペースを乱されない 個人競技・単独制作・分析や考察 集団のルールに合わせる場面が負担になる
感受性 高 評価されない/比べられない 散歩・園芸・サウナ・単純な手作業 上達を求めた瞬間、趣味が評価の場に変わる
感受性 低 面白さだけで選べる 幅広く何でも/刺激の強いもの 惰性になりやすく、なんとなく続く

研究でわかっていること、わかっていないこと

ここは正直に書いておきたい。性格と趣味の関係は、わかっていることとわかっていないことがはっきり分かれている。

比較的しっかりした裏づけがあるのは、性格と興味の方向の関係だ。職業への興味を六つの型に分けたホランドの分類とビッグファイブの関係は、複数の研究をまとめた解析で繰り返し確認されている。芸術的な興味は開放性と、人と関わる仕事や人を動かす仕事への興味は外向性と結びつきやすい。音楽の好みについても、開放性が高い人ほど複雑さや実験性のある音楽を好みやすいという有名な研究がある。

一方で、「この性格ならこの趣味」という一対一の対応表は科学的に確立していない。ゲームのジャンルの好みや推し活のような新しい活動は、研究の蓄積そのものがまだ薄い。性格は趣味の中身を決めるというより、続きやすさや疲れ方に影響する程度のものだと考えたほうが実態に近い。

この記事の使い方。診断結果を見て「自分はこれをやるべきだ」と決める必要はない。順番を決める道具として使ってほしい。試す候補が十個あるとき、どれから手をつけるかを教えてくれる。それだけでも、探す時間はずいぶん短くなる。

最初の一歩は「好きなこと」より「続く条件」から

趣味がない状態を、人は欠落のように感じる。何も打ち込むものがない自分は薄っぺらいのではないか、と。でも実際には、忙しさで手放していただけの人も、条件が合わないものを試し続けて疲れた人も多い。好きなものがない人より、合わない探し方をしていた人のほうがずっと多い。

だから最初に決めるのは、何が好きかではなく三つの条件でいい。一人でやりたいのか、誰かといたいのか。毎回新しいことが起きてほしいのか、同じことを繰り返したいのか。上達したいのか、何も考えない時間がほしいのか。この三つが決まれば候補はかなり絞れる。そのうえで、道具を買うのは三回続いてからにする。一回目は借りるか体験に行き、二回目で面倒だった部分を思い出す。三回目でまだ手が伸びるなら、条件が合っている。

そして、続かなかった趣味を失敗と呼ばないことだ。あれは条件のデータだった。準備が面倒でやめたのか、人が多くて疲れたのか、うまくならなくて嫌になったのか。理由がわかれば、次の一つは確実に精度が上がる。趣味は探し当てるものというより、自分の扱い方を覚えていく過程で残っていくものだと思う。